ハニの戸惑い 56

星屑湯の宿の大広間での結婚式から、気が付けば春の季節が過ぎて、新芽の若葉の色が眩しい季節になっていた。

この若葉色は、スンジョ君がテニスをしている時の笑顔と同じで、何時間も見ていて飽きない。

スンジョ君の赤ちゃんが産まれる予定日まで、あとひと月くらい。

今の不安は、赤ちゃんが産まれてひと月ほどは休学する事。

他の人ならどうってことないけど、勉強が苦手な私にしたら、このひと月はすごく不安だ。

「不安・・・・・・・・」

「ん?」

ベッドに入って本を読んでいたスンジョ君が、私の呟いた言葉に応える様に、本を閉じた。

「不安?」

「うん・・・・・休学している間、みんなより勉強が遅れちゃう。」

「どっちみち、お前は今の状況でも遅れてるだろう。」

「ん~もぅ~」

手を挙げてスンジョ君を叩こうとしたら、お腹の子供が勢いよく蹴った。

その動いたお腹がスンジョ君にもよく見えたみたいで、ニヤリと笑って私の手を止めた。

「ほら、子供がオレを叩いたらダメだって、言っているだろう。」

そうだよね。

子供の前では、喧嘩なんてしないで仲良くしていないと。

「産むのは不安じゃないのか?」

「大丈夫、スンジョ君が立ち会ってくれるから。」

「オレに見られるのは嫌だって・・・星屑湯の時に言わなかったか?」

「あっ・・・・・」

そうだった・・・・。

切迫早産になりかけた時、禿げたあの先生に診られるのも嫌だし、スンジョ君が代わりにって言ってくれた時、その方がもっと嫌だと言っていた。

「もう、だ・・・・・大丈夫・・・・・・我慢する。」

スンジョはハニの頭を自分の胸に抱き寄せた。

「オレだって、あの禿げた医者にお前の大切な場所を診られるのは嫌だったけど、それよりもオレが医者になったら、他の女(ひと)の産まれたままの姿だって診る事になるぞ。」

「え~!」

「声が大きい、ほらもう寝るぞ。」

リモコンでスンジョは天井灯を消して、枕元のスタンドに電気を灯した。

いつも通りスンジョの腕に包まれるようにして目を閉じると、優しい声でハニの耳元で囁いた。

「こうしてお前を抱いていても、お腹が大きくなって来たからハニと少し距離が出来たような気がする。親になれば今まで通り二人っきりの時も少なくなるかもしれないけど、出来る限り時間を作ってお前と二人っきりになるようにするから。」

「ありがとう。」

スンジョはハニが言う、ありがとうと言う言葉が好きだ。

その言葉を聞いて、言わないといけない事を言おうと思った。

「来月、もしかしたら予定日辺りに、教授と講演会に行かないといけない。」

「そ・・・・そんな・・・・スンジョ君の立ち合いがあるから不安もないのに。」

「断れない講演なんだ。子供が産まれる予定日だとは言ってあるが、絶対にその日に産まれるとは限らないし、ハニにどう言おうか迷っていたけど、もし行く前後に兆候があれば行けれないと教授に伝えてある。」

スンジョ君は教授と一緒に講演に行く事を優先にしないといけないよね。

パラン大病院からも期待されているのだから。

「お袋にも近くなったらそう言うから、心配するなよ。」

「うん・・・・いつ産まれるのか判らないからね。」

そういう事しか私には出来なかった。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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