ハニの戸惑い 59
「ギリギリまで頑張るから。」
そう言ってみたものの、階段を上がるのも大変になって来たし、降りる時はもっと怖かった。
前みたいに意地悪をされる事は無くなったけど、大学の階段は急いでいる人たちも多いから、時々怖い時があった。
ハニは、教授と一緒に講演に出かけているスンジョの代わりに、定期検診の付き添いをしてくれるグミとパラン大学で待ち合わせをしていた。
エレベーターを使いたいな。
そう思っても、社会科学部の棟にはエレベーターがないし階段の幅が狭い。
階段の手すりを持って、ゆっくりと降りていた時に、一人の学生がハニを追い越した。
一瞬、「ハッ」としたがその学生はクルッと振り向いた。
背の高い少し男の子っぽい感じのモデルのような女の子が、ハニの方に手を差し出した。
「上の階から見ていたら、すごく危なっかしいから、一緒に降りてあげるわ。」
声の低い男の子っぽい女の子は、驚いているハニの手を掴んだ。
「私の事を知らないかもしれないけど、私はキム・ミンジュ。あなたは、あのペク・スンジョの子供が出来た、オ・ハニでしょ?」
ペク・スンジョと結婚をしたとは言ってくれなかった。
結婚式に来てくれた人は高校時代の人ばかりで、大学関係の人は誰も呼んではいなかったから、仕方がないかもしれない。
女の子なのに、男の子みたいに大きな手に不思議な感じがした。
でも、その手はすごく安心出来るくらいに優しさが伝わって来た。
「ほら無事に着いたわ。じゃ!あとは気を付けてね。」
「ありがとう!」
「どういたしまして。」
キム・ミンジュは陽気に手を振って、社会科学部の棟から外に出て行った。
キム・ミンジュだけではなく、すれ違う人たちが今日は声を掛けてくれた。
「大分お腹が大きくなって大変そうね。」
「困った時は助けてあげるよ。」
今まで、ミナやジュリにジュング達7クラスの人たち以外に優しい言葉を掛けてもらったことはなかった。
みんなスンジョと付き合っている事が気に入らなくて、よく意地悪をしていた。
「そうなの・・・・それはきっとハニちゃんの良さを知ったからよ。それにしても、スンジョはハニちゃんの出産予定日に講演に行くから、何かあった時はお願いなんて言って・・・・・・愛する妻の為なら、行かなくてもいいのにね。」
それは出来ない事をグミも判っていたが、初めての出産は何かと不安になるもの。
娘のように可愛いハニに、母の代わりになれるようにしたいと思っていても、一番傍にいてあげた方がいいと思うのはスンジョだと判っていた。
「で、検診の結果はどうだったの?」
「もういつ生まれてもおかしくないくらいに成長をしているから、万が一の時はすぐに来る事が出来る様に準備をしておくようにって言われました。」
その時が近いと思うと、ハニは今まで以上に不安になった。
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