ハニの戸惑い 60
いつもなら美味しく夕食を食べられるのに、スンジョ君が二日間続けて家にいないと食べる気持ちにもならない。
一応、明日にはスンジョ君は帰って来るとは言っていたけど、淋しいな・・・・・・・
「ごちそう様でした・・・」
「あら!もういいの?あまり食が進んでいないわね。」
「なんだかあまり食べたくなくて・・・・・」
斜め前に座っているウンジョが、チラリと目をハニの方に向けた。
「お兄ちゃんがいないから食べれられないなんて、ハニ姉さんも意外と普通だったんだね。」
「まるで私が普通じゃないみたい。」
グミがデザートをハニの前に並べるが、いつもならすぐに食べ始めるが、今日はあまりデザートも食べる気持ちになれなかった。
「ウンジョ君・・・・・食べる?なんだか今日は食べたくなくて・・・・・」
「あとから返せと言っても返さないからな。」
病院の検診から帰って来る途中から、なんとなく不安な気がしていた。
グミに心配かけないようにと平気な顔をしているが、その平気な顔も平気ではなくなりそうだった。
「ハニちゃん?もしかして、陣痛が始まったの?」
『ここで産むなよ』と、何も知らないウンジョは嫌味っぽく言うが、その冗談とも取れない言葉にも、笑顔で応えられそうもなかった。
「もしそうならお風呂に入る?スンジョが帰って来るまでに産まれてしまうかもしれないし、いつ産まれてもおかしくないと先生もおっしゃっていたから。」
「ギドンを呼んだ方がいいかな?」
「大丈夫です。お母さん、お風呂に入って休んでいれば大丈夫かもしれません。」
お腹も少し下がって来ている事に気が付いているのは、出産経験のあるグミ一人しかいない。
明日の学校の時間に間に合うように、スンジョは朝一番の列車に乗って帰る事になっていた。
グミが急いでお風呂に湯を張ると、ハニは着替えを持ってバスルームに向かった。
「あまり長湯はしないでね。簡単に身体を洗って出てくるのよ。」
いざこの時を迎えると、こんなに不安になるとはハニは思ってもいなかった。
いつ産まれるのかも分からないし、スンジョの為にもどこにも行かないでとは言えなかった。
サササッと体と髪の毛を洗って、ハニが部屋に戻るとタイミングよく携帯にスンジョからの電話が入った。
「もしもし?」
<大丈夫か?変わりはないか?>
言おうかどうしようかと迷っていたが、無言でいるその間にスンジョはどうしてなのか感じた。
<産まれそうか?>
「うん・・・・先生もいつ産まれてもおかしくないと言っていたけど、たぶん大丈夫みたい。スンジョ君は気にしないで明日帰って来てね。」
そう言って平気なふりをしていたが、段々と痛む感覚が縮まって来ていた。
スンジョからの電話を切った後から、痛みは徐々に増してスンジョが帰って来るまで待てるのかが不安になって来た。
寝室を出て、階下の様子を伺うとギドンが帰宅していた。
いつもなら食事を摂りながら晩酌をしているが、グミからハニの状況を聞いたのか、今日は晩酌をしないで夕食だけを摂っていた。
「パパ・・・・・」
「ぉお、ハニどうだ?」
グミとスチャンもハニの様子を心配そうに眺めていた。
「スンジョ君が帰って来るまでに間に合わないかもしれない。さっきからずっとお腹が痛くて。」
「産まれるのね!私の可愛いハニちゃんの赤ちゃんが産まれるのね。パパ、私がハニちゃんを病院に連れて行くから家の事は後は任せるわ。」
スンジョに頼まれていたからでもなく、いよいよ対面する孫娘との時間に、グミは張り切っていた。
ただ、まだこの時は、産まれる子供が女の子か男の子か、ハニもグミも知らなかった。
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