グミの戸惑い 2
グミは若い家族の幸せな顔を見ながら、25年前の自分を思い出していた。
「スチャンさん、私ね・・赤ちゃんが出来たの。」
「そ・・・そうかぁ・・・・・グミさんも僕も親になるのかぁ。」
スチャンはまだ膨らみもないグミのお腹に、ふっくらした手を添えていた。
「男の子かなぁ~」
「どっちなのかしら・・・女の子がいいわぁ・・・」
最初は、別に女の子だろうが男の子だろうかこだわっていなかった。
両親の反対を押し切っての結婚だった。
スチャンの人柄に一目ぼれをして、高校を卒業と同時に結婚。
それからすぐに、体調の変化が気になり病院へ行った。
まだあの頃は、今ほど会社の規模も大きくなく、スチャンの仕事場にグミも付いて行っていた。
「自分の子供が産まれると思うと、赤ちゃんのおもちゃを考える楽しみも出来た。グミさんありがとう、僕の子供を産んでくれる事。」
「そんな・・・私こそ、スチャンさんの赤ちゃんがこんなに早く出来るとは思わなかったわ。」
まだ19歳の私は、母になる不安より産まれてくる赤ちゃんとの楽しい毎日しか考えていなかった。
スンジョの時は悪阻もなく、生きているのか心配になるほどお腹の中で大人しくて、胎動もあまり感じる事がなかった。
定期検診の帰りに、パパと一緒にデパートを廻ってはベビー用品を見る事が楽しみでもあったわ。
「スチャンさんの赤ちゃんは女の子かも知れないわ。」
「先生に聞いたの?」
「聞かなかったけれど、お腹の中で大人しいから、きっと女の子だと思うの。」
その思い込みが一番スンジョを傷つけたのかもしれない。
そう、スンジョは予定日通りに陣痛が来た。
陣痛も他の人に比べて大変でもなく、病院に行き陣痛室から分娩室までパラン大病院では最短だと言われた。
「グミさん、頑張ってください・・・・僕が付いていますから。」
「はい!スチャンさんの可愛い娘を生みますから!」
元気な鳴き声が聞こえたのは、その私の言葉からわずか数分後。
担当だったパク先生の一言が今でも忘れられない。
「ペク・スチャンさん、ファン・グミさん、パラン始まって以来のとても綺麗な顔をした・・・・・・」
そうその言葉まで私は期待していた。
ただ、パパがあの時嬉しそうな顔をしていた事は覚えている。
パパは男の子が欲しいと言っていたから、私より先に付いている物を見ていた。
もしかして・・・・・・その不安はあったわ。
「とても綺麗な顔をした女の子ですか?」
「いいえ、綺麗な顔をした男の子です。」
その言葉を聞き終わると、私は声を挙げて泣き出した。
先生もパパも私が声を挙げて泣いた理由は、男の子が産まれて嬉しいのだろうと思っていたみたいだった。
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