グミの戸惑い 4
スンジョを出産したのを機会に、私はスチャンさんの仕事の手伝いを辞める事にした。
「グミさんは、スンジョの世話で大変だから。」
いえいえ、スンジョは大人しくて手のかからない子供。
初めての子供が、こんなに大人しいのならまだ次も考えてもいいカモ。
だって、スンジョは望んだ女の子じゃなかったから。
その頃からスチャンさんの会社は忙しくなり、初めての子供の世話を手伝えなくてすまないと言って、子供の成長を教えてほしいからと、私にカメラを買ってくれた。
「このカメラで、スンジョの成長記録を撮ってほしい。」
スチャンさんのそのお願いを私は聞いただけ。
初めての子供の成長を一つずつ記録に残す事は、どこの家庭でもしている事だわ。
「スンジョ、ほぉ~ら~こっちを見て。そうよぉ~、いい子ねぇ~可愛いわよ。」
スンジョは良く笑うとても可愛い子供。
まだ若い母親のグミが外に連れて出かけると、ベビーカーの中で大人しくしているスンジョは、若い女性だけではなく、年配の女性も駆け寄るほどだった。
「かわいいわね。」
そう言うと、スンジョはクルクルとした目を輝かせて笑顔を向けていた。
スンジョの評判を聞いて、一目見ようと散歩の行先にしていた公園に人が集まるようになって来た。
誰もが、スンジョは可愛い女の子だと思っていた。
どんなに男の子らしいベビー服を着ていても、スンジョは女の子に間違われるほど愛らしい顔をしていた。
「なんだか複雑だな。グミさんに似て、綺麗な顔をしているのは嬉しいが、女の子に間違われるのはね・・・・・」
「そう?今は、男の子も綺麗な顔の方がいいのよ。ねぇスチャンさん、いっそ用意した女の子の服を着せようかしら。」
「そ!それはいけないよ。大きくなって、写真を見て傷つくよ。」
「勿体ないじゃない?小さい時に、こんなに可愛かったって思い出話になるくらいで終わるわ。」
スチャンは、グミの話に反対をした事は一度もなかった。
ほんのちょっとだけ、買って来た女の子の服を着せないでそのままにしておくのはもったいないという気持ちから始まった。
グミの用意するスンジョの服が、その後も女の子のままになるとは、スチャンは思いもよらなかった。
いくら女の子の服を着て可愛いと言われる時期は短い。
幼稚園前には、男の子の服をきっと着せるだろうと思っていた。
0コメント