グミの戸惑い 6
「スンジョ、この服を覚えている?」
イタズラ好きでもあるグミの目が キラリ と光った。
それとは反対にスンジョの目が ギロリ と睨みつけた。
「まだそれがあったのか?」
「どうしたの、スンジョ君?・・・・・わぁ~可愛い!」
グミがスンハの部屋にいるスンジョとハニの目の前に広げたのは、スンジョにしたら出来れば燃やしてしまいたい物でもある。
「可愛いでしょ?これ、お兄ちゃんを連れて退院して来た時に着せたベビードレスよ。いつか女の子が産まれたら着せようと思って、大切にしまっておいたの。ルミはずっと病院だったから、着せる事が出来なかったのよね・・・・・・」
スンジョとウンジョの間に産まれたペク家の可哀想な赤ちゃん。
「これを着せてくれるかしら。」
「いいのですか?お母さん。」
スンジョはあまりいい気持ちはしなかったが、自分の妹には着る事がなかったベビードレスだが、母にしたら女の子であるスンハに着せたくて、どこかにきちんとしまっておいただろう。
スンハの為に設えた(しつらえた)かのように、ピッタリサイズにこれ以上は付けられないくらいにたっぷりと使われたレースが映えていた。
「やっと着せる事が出来たわ。」
娘に着せる事が叶わなかった、レースのベビードレス。
目の前でそのドレスを着ているスンハを若い二人が笑顔で見ていた。
スンジョには可哀想な事をしたとずっと思っていたわ。
こんな風に幸せな笑顔でスンハを見ているスンジョを、見る事が出来て本当に・・・よかったわ。
「ママ!スンジョは変態なの?」
「どうしてそんな事を言うの?」
幼稚園から帰って来るなり部屋に入って行ったスンジョが、リビングでルミの世話をしていた私の所に訴えるように言って来た。
「今日ね、プールの時間に水着に着替えたら、<スンジョは変態だ!オ※ン※ンが付いているのに女の子の格好をしている>・・・・・みんながそう言って意地悪した。」
もう止めよう。
パパにも言われていた。
スンジョも幼稚園に入ったのだから、男の子の服を着させた方がいい、と・・・・・・
でも、だれよりも可愛くてとても似合っていたから、小学校までと思っていたけど。
大声で泣いているスンジョに、私は何も言ってあげられなかった。
あの頃から、スンジョは心を閉ざして、笑顔を見せなくなった。
違う・・・違うわ・・・・それが切っ掛けかもしれないけれど、ルミが亡くなった時からかもしれない。
考えれば、ルミに掛りっきりになっていて、スンジョの事を構わなかったわ。
手のかからない大人しい子供で、いつもリビングで本を読んでいたから。
あれは多分、最後にスンジョが私の前で女の子の服を着た時だわ。
ルミが亡くなり、ずっとベッドに伏していた時。
「ママ・・・・女の子の服を着たよ。ルミの代わりに僕が女の子の服を着るから。だから泣かないで。」
優しいスンジョの気持ちも私は受け付ける事もしないで、冷たい言葉で突き放してしまった。
「ルミの変わりはいないわ。いくらルミと似ているスンジョが女の子の服を着ても、ルミはもういないの。赤ちゃんのままで天に召されてしまって・・・・・・・・欲しかった女の子なのに・・・・・・」
あの言葉がスンジョを傷つけたと知ったのはいつ頃だろう。
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