グミの戸惑い 8
スンジョが小学校に入学した頃には、ルミの事を完全に忘れた訳ではなかったけれど、パパと少し一緒に外出をするようになっていた。
気が付けば、スンジョもその頃から顔の表情のない子供になっていた。
私がした事が、今目の前にいる可愛い子供の心を傷付け、大変な事をしてしまったと反省をする毎日。
「スンジョ、パパとテニスに行くのだけど一緒に付いて行く?」
「行く・・・・」
この頃からパパの会社も忙しくなり始め、日曜日以外も私は時々関連する会社主催のパーティに出ていた。
お手伝いさんを雇おうと思った時、パパの従妹夫婦が同居してスンジョの面倒を見てくれていた。
スンジョより一つ年下のジスとは年齢も近いからなのか、淋しそうにしていたスンジョも少しだけ笑う事があった。
いつも一緒にいるから、時々はそれぞれの家族は別々に出かける約束をしていた。
あれはジス達家族が夏休みを兼ねてアメリカの家に行っている頃、スンジョが小学校一年だったかしら、こちらはこちらで会社の保養施設に家族で出掛けた。
一人ぼっちで『施設で留守番をしている』と言うだろうと思ったけれど、折角空気の綺麗な所に静養に来たのに、またスンジョは本を読んでばかり。
もうテニスを教えてもいいかと思って声を掛けた。
最初は私とパパがワンゲームをしているのを見ていた。
「ママ、見てごらん。スンジョが興味をしめしているよ。」
パパの言葉に、コート近くのベンチに座って、ただ眺めている感じだったスンジョが、私とパパが用意した子供用のラケットを手に取っていた。
ひと振りふた振り・・・・・
意外と力もあり案外才能があるかもしれない。
そう、親バカ的な事を考えた。
「スンジョ、あなたもやって見る?」
「うん・・・・・」
数回だけラケットの握り方と素振りを教えた。
たった数回だけ、ポイントを教えただけなのに、数時間後にはボールを打ち返す事も出来るようになっていた。
この子のこの能力が、親の身勝手な行動で知らないままになってしまうところだった。
テニスばかりではなく、学校の勉強も先生の説明を聞いただけですぐに覚え、何の努力もしないで知識として、記憶されていた。
それがいいのか悪いのか、ますます心を閉ざしいつも下ばかり向いて本を読む子供になっていた。
私は自分のした事で、ずっと後悔ばかりの毎日を送っていた。
テニスをしている時も、毎日本を読んでいる時も、子供らしい笑顔さえも見せず、学校で満点ばかりをとっても一度も嬉しいとか言う事を表現が出来ない子供だった。
手の掛らない、自分の事は自分で何でもできる子供らしさのない子供がスンジョ。
そんなスンジョも少し変わったのは、小学校の3年生の終わりごろ。
その頃に、私は体調が思わしくなく朝起きる事が出来なかった。
「ママ・・・・・パパがご飯を作ってくれたよ。」
トレイに乗せて、朝食を寝室まで運んで来てくれた。
「ゴメンね・・・ママ、チョッと食べられそうもないから・・・・・」
「病院に行く?」
「病気じゃないのよ・・・・・」
「病気じゃないの?」
「赤ちゃんが出来たの。」
そう・・・・・ウンジョがお腹に出来た時、私はひどい悪阻に苦しんでいた。
食事はパパの従妹でジスの母親が用意をしてくれたけれど、朝食だけはパパが用意してくれていた。
0コメント