グミの戸惑い 11
「スンジョ、いらっしゃい。」
病室の入り口に立ち尽くしていたスンジョを、グミは中に呼び入れた。
スンジョはルミが産まれた時と同じくらいに、ウンジョを可愛がってくれた。
可愛がれば可愛がられた方もそれに応えていた。
ウンジョは物心ついた頃から、兄の真似ばかりをしていた。
無口なスンジョに対してウンジョはよく話をしよく笑う子供。
二人とも、手の掛らない子供で私は母親としてちょっと物足りなさも感じていた。
思春期になったスンジョは、他の家庭の男の様に、汗臭いだとか顔にニキビや皮脂でギトギトとしている事もなかった。
ただ親として悲しいと思っていたのは、女の子の話がなかった事と、普通の家庭の思春期の男の子の対応をした事がなかった事。
中学生になった頃に一度スンジョに聞いたことがあった。
「スンジョはどんな女の子がタイプなの?」
「頭のいい子。」
その一言だけで、私の中でスンジョのお嫁さんにする人がどんな女の子がいいのか、はっきりと思い浮かんだ。
パパの会社の取引先の娘や、私の友人の娘と何十人もの女の子と話をしたけれど、スンジョにピッタリとお似合いの女の子は一人もいなかった。
ただ、外見が可愛いだとか学校のお勉強が出来てとか、家柄がとか・・・・・・
そんな事は関係なかった。
スンジョが言う頭のいい子とは、自分の趣味に合う女の子だという事だけれど、私が思うスンジョにお似合いの女の子はそんな女の子ではなかった。
あの子の人を素直に見る事の出来ない性格に付き合ってくれる女の子でなければ、スンジョの冷めた心を温めてあげる事も出来ないし、鍵を掛けた心を開け放す事も出来ない。
私が間違った事をしてしまって、あの捻くれた性格に育った事に責任を感じていた。
中学二年・三年・高校一年・二年と時間は進んでも、いっこうに私が思うスンジョとお似合いの女の子は現れなかった。
そんな時だったわね。
パパと休日にテレビを見ていた時に流れた地震関連のニュース。
≪震度二の地震で新築住宅が崩壊≫
「まぁ!」
「欠陥住宅だったらしいね。」
「パパはこの家の事ご存じだったの?」
「いや・・・さっき車の中でニュースを聞いたんだ。」
≪被害者でこの家の持ち主のオ・ギドンさんと娘のオ・ハニさんは怪我もなく・・・・・≫
「オ・ギドンだって?」
いつも物静かなスチャンが、テレビから聞こえた名前に思わず大きな声で聞き返した。
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