グミの戸惑い 15
生れたばかりの我が子を見ている若い二人を見るだけで、私も幸せな気分になって来る。
同居した時は、二人がまさか知り合いだとも、私が知らない間に付き合っていた事も知らなかった。
微妙に変わって来たスンジョの表情に気が付くのは、そんなに経ってからではなかった。
冷たい言い方をしていても、ハニちゃんが嬉しそうにして笑っていたり、見ていない振りをして見ていたスンジョの目は、私が気が付いていないと思っていた。
恋の力は、思いもよらない力が働くのよね。
人の目を気にするスンジョが、修学旅行で女子に苛められていたハニちゃんを救うために告白をしたなんて。
その後も、パパが倒れた時に社長代理として仕事をしていた時に、ユン会長の孫娘と見合いをした事を知った時は、もうハニちゃんが私の娘にならない悲しみも大きかったけれど、スンジョがまた昔のスンジョに戻ってしまう事の方が辛かった。
でも、スンジョは自分の気持ちに素直になって、一旦は引き受けたお見合いを断った時は、我が息子ながら男気のある子だと思った。
親の為、会社の為と見合いをした事が、スンジョにとっては通らないといけない道だったのかもしれない。
「何だよ、さっきからニヤニヤと笑って。言いたい事があったら言えばいいのに。」
「聞いてもいい?」
「何を聞くつもりだよ。」
「スンジョじゃなくてハニちゃんよ。」
そうよ、スンジョに聞いたって教えてくれない事は判っているわ。
「ハニちゃんは、スンジョのどんなところが好きになったの?」
「どんなところって・・・・・・・」
真っ赤な顔をして、スンジョを見上げるハニ。
そう、この嫁はいまだに片想いをしていると思って、スンジョをまっすぐに見る事が出来ない。
「どんなところって・・・・・・優しい所・・・・・・です。」
「まぁ、スンジョが優しい?」
「いつも私の事を助けてくれるから・・・・・・それに、勉強を教えてくれるから。」
気の利いたプレゼントだってした事のない息子を優しいとか、勉強を教えてくれるとか・・・・・こんなに欲のない女の子がスンジョの嫁になってくれて本当に良かったわ。
「あっ!もう一つあります。」
「もう一つ?」
ベビーベッドで眠っている娘を抱いて、その眠っている顔を見ながら小さな声で教えてくれた。
「私だけだよって・・・・・・・」
一瞬スンジョがギクッとした表情をした。
それをグミは見逃すはずがない。
「ずっとお前だけがオレの横にいる事が出来るって・・・・・・・最初にキスをした時に言ってくれたの。」
これだから、私はスンジョがハニちゃんを好きになったのだと思った。
隠し事が出来ない、純粋な心を持った女の子だから。
私がずっと後悔をしていたスンジョの間違った育て方。
捻くれた性格をまっすぐな心のハニちゃんが、人間らしくしてくれた。
まだまだスンジョはハニちゃんから沢山の事を学ばないといけないと思うわ。
0コメント