グミの戸惑い 17
「ばぁ~ば」
私の結婚は早くて、スンジョを出産した時は19歳。
だからと言って、息子にも早い結婚を薦めた訳ではないけれど、スンジョの苦悩を見ていたら何とかしないといけなかった。
ずっと苦しんでいた事は知っていた。
何でも簡単に物事をやって行く事が出来たスンジョは、ハニちゃんと出会うまで苦労や努力をした事がなかった。
ハニちゃんは、スンジョが普通の青年になるためには必要な女の子。
そんなハニちゃんは私の嫁ではなく、娘として愛している。
その娘が、可愛い孫を私に預けて大学生として復学した。
「ばぁ~ば」
「なぁに?」
私を“ばぁ~ば”と呼んでくれる孫娘。
可愛くて仕方がない。
何でも計算通りに事を済ませる息子は、子供も計算通りに授かったのかどうかは、私は本当の事は知らないけれど、その息子よりも嫁のハニちゃんはもっと素敵だわ。
『スンジョ君のお手伝いをしたい』
その気持ちだけで、社会科学部から看護学部に転科した。
そこまで息子を愛してくれる嫁がいれば、もう大丈夫よね。
昔のブラックな過去は決して消える事はないけれど、こんなに素敵な妻がいればあなたはこれからもどんな困難な事が起きても乗り越える事が出来るわよね。
「ばぁ~ば」
「ゴメンね。スンハ、あなたを見ていると、私が間違った行いをした事を何度も思い出し、その事を反省させてくれるわ。スンジョがもし女の子だったら、スンジョが男の子でもカミングアウトした人になっていたら、こんなに愛らしいあなたと出会う事もなかったわね。」
つかまり立ちを覚え、ニコニコと笑いながら近づいてくるスンハは、グミの後悔の言葉を許してくれるようにも感じた。
長男のスンジョに続き、二男のウンジョも可愛い彼女が出来てから、大好きな兄の真似をしていた子供から、大好きな兄と同じ人生を歩んでいるように見える。
後悔は先に立たずというけれど、後悔して二度と同じ間違いをしないと誓えるほど、息子を救ってくれた嫁に感謝する気持ちで一杯になった。
息子は医師として人の病を治し、嫁は妻として夫の傷付いた心を癒しそれを活かした職業に就く。
未来を明るくするのも暗くするのも、最終的には本人次第。
ちいさな孫娘の手が、自分を可愛がってくれている祖母の所に到達すると、コレが今のグミにとってのその答えのように感じた。
ここに来るまで、スンジョは沢山の事に戸惑い、そんなスンジョをハニも戸惑いながら寄り添い、傷付いた息子を戸惑いながら良い伴侶と巡り合えた事に、全てに感謝をしたくなって来た。
0コメント