小さなライバル達(スンハ) 6
「ハニちゃん、いつまで働くの?」
妊娠8ヶ月に入り、ハニのお腹もかなり大きくなって来た。
立ち上がるのもしんどそうにしている事が多い。
「ギリギリまで頑張るつもりですけど、今日の診察で決めようかと思うんです。」
「今日ね、おばあちゃん、スンリも一緒に行くんだよ。」
「スンハも行くの。オンマのお腹の赤ちゃんが見えるって言ってたから。」
「そうなの・・・・・学校も幼稚園も休みだから、行って見せてもらってらっしゃい。」
スンジョに身体を支えられてハニはユックリと立ちあがり、玄関に行き備え付けの椅子に静かに座って靴を履いた。
相変わらずオンマの身体に添えられるスンジョの手を、スンリは引き剥がすようにして小さな王子様はオンマを守っているつもりになっていた。
「アッパ!アッパはスンハと手を繋いで行こうね。」
スンハはスンハでスンジョとハニの間に割り込むようにして、嬉しそうにスンジョの手と自分の手を繋いだ。
「さあ、ペク先生のお坊ちゃんとお嬢ちゃん、今からこのモニターに赤ちゃんが映るから見ましょうね。」
スンリはハニの大きくなったお腹を見てびっくりした顔をした。
「オンマ、お腹痛い?」
「痛くないよ?どうして?」
色白のハニのお腹に見える血管をスンリの細い指がなぞっている。
「こんなに風船みたいに大きくて、傷がついてるよ、破裂しちゃう・・・・・・」
「スンリ、お前もこの中にいたんだぞ。スンハもな・・・・」
スンリは自分の頭を診察ベッドの上に乗せて暫く考え込んでいる。
「僕こんなに大きいのに、どこから出て来たの?」
まだ小さくて何も知らないスンリは、ハニのお腹を一生懸命に身体の向きを変えて自分がどうやってオンマのお腹から出て来たのか考え込んでいた。
「本当にスンリは何も知らないんだから。」
「お姉ちゃんは知っているの?」
スンハはハニの脚元に廻って指を指した。
「ここ!ここに出口があってそこから出て来るの!」
ハニとスンジョはスンハの言った言葉に驚いた。
「どうしてスンハは知っているんだ?」
「アッパの机の本を見たの、この入口から赤ちゃんの素が入って・・・・・・ずーっと通って・・・ここ!ここで赤ちゃんの卵が出来るの。」
スンジョとハニは8歳の娘の言う言葉に顔を赤らめた。
「さすがに、ペク先生のお嬢さんですね。よくお勉強をなさっていらっしゃる。」
パク先生は吹き出したいくらいなのを必死でこらえながらスンハを褒めると、スンハ得意そうに胸をはった。
小さな弟スンリはスンハが動いた場所を同じように動いては戻って来て、スンジョの顔を見た。
「アッパは天才なんだよね?」
「そうかな?」
「そうだよ、オンマが言ってたよ。僕もここに赤ちゃんの素を入れて!オンマと一緒に赤ちゃんここから出すの。」
まだ小さなスンリは小さすぎて妊娠出来るのは女性だけとは知らない。
「バーカ」
「スンハ!女の子がなんて言う言葉を使うの?」
昔スンジョが言った言い方とそっくりに、スンハがスンリをバカにしたように言った。
「いいでしょ?女の子だって普通にバーカって言ってるよ・・・・あのねスンリ、あんたは男の子。」
「そうだよ。」
「男の子はお赤ちゃんが産めないの。」
診察担当のパク先生とハニとスンジョは、スンハの的確な説明を感心しながら聞いている。
「男の子は赤ちゃんの素を出す方なの・・・・」
キョトンと、まだ小さいスンリには理解が出来ない。
スンジョもこれ以上は子供が言う事ではないと思い、スンハのお喋りを止めようと口を手で塞ぐが、一度話し出したらグミⅡ世のスンハは止まらない。
「んもぅ!わかんなかったらアッパに聞きなさいよ。オンマのおなかの赤ちゃんの元はアッパが*******モゴッ・・・モゴモゴ・・・・・・」
大人三人は子供の言葉にどう反応をしたらいいのか、お互いばつの悪そうにしながら視線を合わせないようにしていた。
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