小さなライバル達(スンハ) 12
「スンジョ、ありったけのタオルはこれでいいかしら。お湯は今ウンジョとミアちゃんが用意しているわ。」
「スンジョ・・・ワシらは何をしたらいいのだろう。」
スチャンとギドンが不安そうに部屋の入り口に立っていた。
「親父とお義父さんは、オレの携帯にパク先生の番号があるから連絡して、早産だから産まれて来る子はNICUに行く事になる。パク先生が全て手配してくれるから・・・・・」
「お兄さん、何か他にする事は有りますか?」
ミアがウンジョと一緒にお湯を運んで来た。
ミア自身もあと何カ月で初めての出産で、ハニの予定よりも早い陣痛に不安を見せていた。
「ミアは・・・・・ハニの顔の汗を拭いてやってくれ。」
大人たちがバタバタと動いている様子で、スンハとスンリが起きて来た。
「アッパ・・・・・・」
スンハはスンリの手を引いてスンジョの部屋に入って来た。
「赤ちゃんが産まれるんだ・・・・・向こうに行ってなさい。」
痛みに耐えているハニの様子にスンリは驚いて泣き出した。
「オンマァ~オンマァ~」
スンリの泣き声が聞こえたのか、ハニが目を開けて二人の子供を見た。
「オンマは大丈夫だから、ミアおばさんとお部屋に・・・・・・・・・・」
また陣痛が来たのかハニが子供たちに苦しい様子を見せないようにしているが、それも出来ないくらいの痛みが押し寄せて来た。
「アッパ、スンハもいたらだめ?」
スンハがいればスンリもいるという事は判っている。
まだ幼い二人に見せていいものかどうか、スンジョは迷ったが頷いた。
「二人共、オンマがどんなに苦しがっても泣かないならいい。」
「泣かない!!僕、お兄ちゃんだから。」
泣き虫スンリは興奮状態だが、自分の妹が誕生する事を自覚していた。
「判った、それならオンマと手を繋いであげなさい。」
「ハニ・・・頑張れ。皆がいるから大丈夫だから。」
「オンマ・・・スンハだよ。スンリもいるよ。」
二人の子供たちが心配そうにハニを見ている。ハニは一生懸命に笑顔を作っているが言葉は出ない。
遠くで救急車の音が聞こえて来た。
ウンジョとミアは救急車に場所を知らせるために急いで外に出た。
スチャンとギドンは玄関から二階に上がる周囲を、救急隊が入って来た時のために片付けていた。
「スンジョ君・・・・もう・・・産まれそ・・・・・・・・」
スンジョが廻って確認した。
「いいぞ・・・ハニ・・・頭が見えてる・・・・・・・」
グミも初めての出来事に戸惑いながらも、産まれて来る孫のためにお湯の準備とスンジョが取り上げたら受け取れるように準備をしていた。
バタバタと救急隊が家の中に入ってくる足音がした時に、小さな小さな今にも消えそうな産声が聞こえた。
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