小さなライバル達(スンハ) 15
看護師として小さな赤ちゃんを何度も抱いた事はあったけど、自分の子供だと壊れそうなほど繊細に感じる。
「もう少しお腹の中にいたら育ってたかなぁ。」
「どうだろう・・・小さく産まれても、発育は遅れていないしどこも普通に産まれた子供と変わらない。余り特別扱いをしないで育てればいいさ。」
「特別扱い?」
小さな口をモゴモゴさせている小さな娘の顔を見つめているスンジョの顔は、温かくて優しい顔をしていた。
「特別扱いをすると、自分は他の子供たちと違う・・・そう思って心を閉ざした子供を知っているんだ。」
「誰?その特別扱いされて心を閉ざした子供って・・・・」
ニヤッと笑って、ハニの頭を小突いた。
「スンジョ君のこと・・・?」
「よく判ったな。ハニはお袋に似ている所があるから、スンリが産まれた時は本当に心配した。お前は弟より妹が欲しかった・・・・・って言っていたからな。」
三人の子供の中で、スンジョに一番似ているのはスンリ。
それでもスンジョの傷付いていた心を知っているハニだから、女装などさせるはずはない事は判っている。
「この子・・・・良かった・・・・鼻はスンジョ君に似て。スンハもスンリも鼻はスンジョ君の鼻に似ているから・・・・・・・・スンハもスンリも私に似ていないで頭は良いみたいで・・・・・・・・・」
ハニが自分に対して劣等感を持っている事は、スンジョ自身知っていた。
「子供たちはハニの性格に似て・・・・・・結構頑固だけどな。」
二人の後ろから産科の看護師が、ニコニコと笑って見ていた。
「ペク先生は随分プライベートでは甘い顔をされるんですね。」
まさか見られているとは思わなかった二人はビックリして振り向いた。
「病院では笑いもしないで、感情があるのかしらって言うくらいに無表情に診察やオペをされるのに、オ看護師やお子さんにはとっても素敵な笑顔をされるんですね。」
「そうでしょ?高校生のころは冷徹感とか氷の王子って言われていたんですよ。」
ギロリと睨むスンジョにハニはペロッと舌を出した。
三番目の子供であっても、初めての授乳は心配だった。
飲んでくれるのだろうか、沢山出るのだろうか・・・・・
「ス・・・・スンジョ君・・・・・見てないでよ・・・・・・・・恥かしいから。」
「何言ってるんだよ、お前の夫である前に医者だ。胸を見たって何とも思わないさ。それに、お前の一時だけの巨乳を見たって、あと数カ月もすれば見慣れた胸になるだろうから。」
「酷い!・・・なら・・・・見ても良いけど、凝視しないでよ。」
産まれたばかりの小さな小さな娘は、全身の力を振り絞って、初めの授乳体験をした。
スンジョに授乳を見られるのは、いくら三人目の子供でも少し恥ずかしかったが、あの冷たくて表情の読めなかったスンジョが、信じられくらいに優しく我が子を見ている顔を見ると、ハニは幸せを実感できるようだった。
「名前・・・・・・決めないと・・・・・・・」
「そうだな・・・・・・・」
スンジョは上着のポケットから可愛らしいキャラクターの付いた封筒を出した。
「これ・・・・スンハとスンリから預かったんだ。」
中に入っていた手紙をスンジョはハニに判るように声を出して読んだ。
「オンマ、スンリと一緒に赤ちゃんが産まれて来るのを見てたよ。お母さんが凄く苦しんで赤ちゃんが」産まれて来る事を知ったよ。
いつも、ドジばかりのオンマが可愛い私とスンリの妹を産んでくれたのは凄いね。
この赤ちゃんは家族みんなが助け合って産まれた赤ちゃんだから、おばあちゃんとおじいちゃんとククスのおじいちゃんとウンジョおじさんとミアおばさんと相談して、スンハが決めたよ。
ペク・スンミ
アッパがダメと言っても、絶体に私の妹はスンミだよ。
学校の先生にも、ピアノの先生にもバレエの先生にも話しちゃたから、変える事は出来ないよ。」
家族みんなで見守った小さな小さな女の子の名前は、家族みんなで決めた名前になった。
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