小さなライバル達(スンハ) 20
「ハハハ、男は蚊帳の外か。」
「ギドン、笑いごとじゃないぞ・・・・なぁ、スンジョ。」
閉店した≪ソ・パルボクククス≫の店内は、ほろ酔いのスチャンの愚痴と、それに応えるギドンの話しが、よく聞こえていた。
スンジョとウンジョはそんな二人を見ながら、無言で食事をしていた。
「兄貴・・・オレの子供も女の子だとか・・・・・男の居場所が無くなりそうだよ。」
「そうだな・・・・・・」
「兄貴も四人目を男の子で頑張ってみないか?」
ウンジョも少しアルコールが入った所為か、愚痴っぽくなっていた。
「四人はな・・・・ハニにそんな余裕があるかだ。お前の方が若いんだから、産まれたら直ぐに考えればいいだろう・・・・・・・それに、確実に産まれるまでは性別は判らないぞ。」
アルコールに酔う事もしないスンジョは、スチャンがかなりいい具合に酔っている様子を見ていた。
「お義父さん、そろそろ終わりにしませんか?オレは明日も早いので、親父を連れて帰りますから。」
「スンジョ君・・・君たちだけで帰りなさい。ワシがスチャンを連れて帰るから。」
ギドンと同居してから15年も経っていた。
お互い義理ではあるが良い親子関係でいる事が出来た。
「親父・・・・オレ達帰るから。」
「そうか・・・・気を付けてな。」
店を出ると、外は日付が変わっているからなのか、ひっそりとしていた。
「信じられないよな・・・・・・」
「何が?」
「馬鹿オ・ハニ・・と言っていた義姉さんが、今は三人の子供の母親になったなんてさ・・・・・」
「そうだな・・・・そう言うお前も、ハニが来た時は小学生だったぞ。」
丁度、今のスンハくらいの歳にハニと同居した。
それがいつの間にか、ウンジョももうすぐ父親になる。
兄スンジョも母のペースに乗せられた形で、21歳と若い年齢で結婚した。
ウンジョはそれよりも少し遅い時期の大学を卒業してからの結婚。
「兄貴・・・・・オレ・・・・軍隊に行く事になった。」
「そうか・・・・ミアは知っているのか?」
いつの間にか、ウンジョも国の義務を果たす時期が来た事に、確かに時が動いている事を実感した。
オレは医師免許を持っていたから、軍服を着る事も危険な場所に行く事も無かった。
ウンジョも不安だろう。
子供が産まれてすぐに行かなければいけないし、親父の会社に入ってようやく落ち着いた時期だったから。
ただ、オレはウンジョにアドバイスをしてあげる事は出来ないが、家の事は任せておけとしか言えなかった。
家に入ると、既に男以外の家族は眠っているのか静かだった。
ウンジョは三階に上がり、オレはスンミの部屋を覗いた。
ハニは一人で眠る事は好きじゃないらしく、オレがいないからスンミの部屋で眠っていた。
静かにドア開けると、そこにはスンミだけがベッドで静かに眠っていた。
お袋の趣味とはいえ、少しずつハニの趣味に変わりつつあるこの部屋だが、オレには落ち着けない場所だった。
ベビーベッドのスンミの寝顔を見て、ようやく一日が終わった気分になった。
スンミの顔はオレに似ているとハニは言っていたが、少し口を開けて眠っている寝顔はハニとよく似ていた。
きっとハニは眠っているだろうと思いながら、ふたりの寝室のドアを静かに開けた。
珍しく電気を消して眠ったのか、部屋は真っ暗。
壁のスイッチを押して眩しさに目を瞬くと、いつからそこにいたのかハニがオレに抱きついて来た。
「スンジョ君・・・・お帰りなさい。」
「起きていたのか?」
「淋しくて・・・・・・・」
「風呂に入るけど・・・・・お前も来るか?」
「エヘ・・・・・」
いつ頃からか、子供が寝静まるとハニは淋しくて・・・・とよく言って来た。
こういう時は一緒に風呂に入りたいという、オレ達だけの合図だった。
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