小さなライバル達(スンハ) 27
「やだ・・・・・そんな事は聞かないでよ。子供もお母さんもいるのに・・・・・」
「いたっていいだろう。お袋は子供を産んだ事のある母親だし、スンハだってもうすぐ4年生になるんだから知ったっていい頃だ。」
ハニは背伸びをしてスンジョの耳元で小さな声で言った。
「スンミを産んでからまだ生理は来ていないし、一年位は妊娠しないでしょ?」
スンジョは呆れたという顔で大きく息を吐いた。
「お前なぁ・・・・・看護師だろ?生理が来なくたって排卵は有るんだ。それに出産後一年はホルモンのバランスが崩れるから、妊娠しやすいって知らないのか?」
不機嫌なままハニに話しているから、二人の子供はスンジョがハニを怒っているのだと思っているように見えた。
「アッパ!オンマを苛めたらだめだぉ!」
スンリが小さな拳を上げて、スンジョを睨んでいた。
グミはスンジョとハニに、二階に行きなさいというジェスチャーを送っていた。
「ハニ・・・行くぞ。」
「どこへ・・・?二階で話をしたら・・・」
「駅前の薬局ならまだ空いている。明日から連休だから今から検査薬を買いに行く。」
外に出掛ける両親に付いて行きたいというスンリを置いて、スンジョとハニは暗くなった外に出て行った。
「スンジョ君・・・・まだ心準備が・・・・・・・」
「何が心準備だ。結婚しているのだから避妊しない限り、いつ子供が出来るのか判らないだろう。」
スンジョの後ろ手に引っ張られているハニが急に立ち止まった。
「なんだよ・・・・・・ハニ?」
口に手を持って行き、苦しそうにしているハニを見て、スンジョは道の端に連れて行った。
「吐きそうか?吐いていいぞ。」
三人産んでも今迄は軽い悪阻だったからなのか、今回はちょっと様子が違った。
何度も吐いて最後は、吐き気だけで何も出て来なかった。
吐き疲れてグッタリしているハニを、近くの公園のベンチに座らせて少し休ませる事にした。
ベンチで休んでからどれくらい経ったのか、ようやく落ち着いたハニの頭を自分の方にもたれかけさせて、スンジョはハニの手を握った。
「男って何も出来ないんだよな。妻が妊娠して悪阻で苦しんでいても・・・・・・人によっては男も妻の悪阻と同じように吐く人もいるみたいだけど、胎動を直接感じるのも産みの辛さも代わってやれなくて・・・・・苦しい悪阻の原因を作ったオレなのに、何もしてあげなくてごめん。でもさ・・・・・スンミをオレが取り上げた時、三人目にして初めて命の誕生の素晴らしさを実感したんだ。専門外とはいえ、医師であって良かったとこの時に思った。ハニが痛みに耐えて自宅でスンミを産んだ時、本当に嬉しくて毎日成長するスンミを見ていて、日に日にハニに似て来たら、どうしようもなく可愛くて。母親のハニはいつもこんな風に子供たちを見ていたんだと思った。」
「スンジョ君・・・・・」
「三人の中でスンミが一番ハニに似ているから、可愛くて・・・・・・昔、ハニを苛めていた償いのつもりで大切にしたいと思った。でも、子供と奥さんは別だぞ。お前が焼きもち妬きだから言うんじゃない。オレの最初で最後の女はハニだけだから、最期の時まで一緒にいたい愛する大切な女性(ひと)はお前だけだ。」
「スンジョ君・・・ごめんね。子供に焼きもち妬いて。浮気はしないでね?」
「するわけないだろう。ハニの横にいるから心から笑ったり、怒って怒鳴ったり出来るんだから。さぁ・・・・・吐き気が治まったら薬局に行くぞ。」
二人で並んで薬局に来て、検査薬を探して家に向かって歩いた。
玄関を開けるとそのまま二階に上がり、ハニはトイレに駆け込んだ。
その数分後、はっきりと反応の出た検査薬をスンジョに見せた。
「ありがとうハニ・・・・・・・・」
スンジョは心の中でそう呟いた。
何時まで経ってもハニは初めて出会った時のままの、曇りのない澄んだ笑顔でオレに微笑んでくれる。
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