小さなライバル達(スンハ) 29
ハニは会計を済ませて、壁に掛かっている時計を見た。
すっかりお昼の時間になっちゃった、スンジョ君一緒に食べないかなぁ。
久しぶりに外科病棟に行くのは、なんだか気恥ずかしい。
ナースステーションの中を覗き込もうとした時に誰かに呼び止められた。
「ハニ!ハニじゃないの!?」
振り向くと、そこにミンジュとヘウンが立っていた。
この二人に見つかりたくないと思っていたのに、残念な事に見つかってしまった。
「ミンジュとヘウン・・・・・久しぶり。」
「ペク先生なら、ナ医師に呼ばれたけど、もうすぐ戻って来るよ。」
相変わらずヘウンは綺麗だ。
すっぴんでもこれだけ綺麗な人はそんなにいないだろう。
「じゃあ・・・・・待っていようかな?」
ミンジュ達に手を引かれてナースステーション裏の看護師の休憩室に入った。
ヘウンはハニがミンジュに休憩室に連れて行かれる間に、内線でスンジョを呼びだしていた。
「復職は来月だっけ?」
「う~ん、まだ迷っているんだ。」
「早くしないと、ペク先生を私とヘウンで奪っちゃうから。」
「どうぞ!スンジョ君は、私以外は見向きもしないんだからね。」
おどけて言う三人。
スンジョがハニを愛している事は、看護師仲間だけではなくパランで働く全ての人が知っている。
「でもいいわぁ~。あのペク先生の子供を三人も産めるんだから。」
「ホントね。私なんか産みたくても産めないんだもの・・・・・・・女というだけで何の魅力もないハニが、ペク先生の遺伝子を増殖してるんだから・・・・・・」
傍から見れば、何とリアクションをとって良いのか困るような会話。
「でもまぁ・・・・・よく三人も作ったわよね、ポコポコと。最低でも三回は・・・・・って事でしょ?」
「ヤ・・・・ヤダ・・・・・そんな言い方。」
ミンジュとヘウンに捉まると、顔を赤くしないでいられないような言葉を平然として言い出すけど、嫌いない人達じゃないがこの手の話題はハニは苦手だ。
「来月からだから、スンミを保育園に預けるのかな?それともお母様が見てくださるのかしら?スンリの時みたいに幼稚園に上がるまで。」
「う~ん、どうかな・・・・・・まだ決めていないんだ。」
歯切れの悪いハニの言葉に、勘のいいミンジュがドッキリするような事を聞いて来た。
「もしかして・・・・また出来ちゃったとか?」
「んん~~・・・・」
早くスンジョ君来てよ。
これ以上ここで二人に色々と聞かれると、今日の診察の結果をスンジョ君よりも早くに言わなきゃいけなくなっちゃうじゃない・・・・・・・・
限界だと言いそうになる寸前に、カチャリと休憩室のドアが開いた。
「ハニ・・・・ゴメン遅くなって。」
その声にハニは、嬉しそうな顔をして立ち上がった。
「ゴメンね、ミンジュにヘウン。また今度・・・・・スンジョ君、お昼を一緒に食べようよ。」
部屋に入ろうとするスンジョの腕をサッと掴んで、ハニはそのまま休憩室を出て行った。
「ねぇ、ミンジュ。ハニの様子、おかしくない?」
「うん・・おかしいよね・・・・・あの子・・もしかして・・・・」
「やっぱりそう思う?スンハやスンリやスンミの時と違って、何か隠しているよね。」
「そうそう・・・三人の妊娠が判った時は、やたらとはしゃいで、普段はミンジュとハニのどっちが五月蠅いかというくらいの子よ。」
「なによ!アンタだって人の事言えないでしょ、ヘウン。」
そんな会話が廊下まで聞こえて来た。
スンジョは、ハニに腕を組まれたまま、職員専用のエレベーターに乗り込んだ。
「で・・・・どうだった?」
「うん・・・・・3ヶ月に入っていた。」
「悪阻がひどいなら復職を遅らせるか・・・・・・・産休もまたすぐに摂らないといけないから。」
「でも働きたいな・・・・・・あまり間を空けちゃうと、勘が鈍っちゃうからね。」
スンジョはクスッと笑った。
「勘が鈍るんじゃなくって、忘れる・・・だろ?」
ぷっと膨れてハニはスンジョを睨んだ。
「まぁ・・・間違いではないけどね。」
今でもスンジョにからかわれたりすると、子供みたいに拗ねてしまうハニ。
尖った唇に、スンジョは一瞬触れただけのキスをした。
「四人目の妊娠のお祝いだ。」
テレを隠すようにスンジョはハニから顔を背けた。
「どっちにしても、スンミと同じにならないようにな。予定日より早く自宅出産なんて・・・・皆に迷惑を掛けられないだろ?無理をしない様にハニが決めればいいさ。」
エレベーターが、ラウンジのある階で停まって二人は降りた。
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