小さなライバル達(スンハ) 31
「オンマ、ただいまぁ。」
「お帰り、スンリ。お母さん、すみません。お迎えを頼んで。」
「いいわよ、可愛いスンリを迎えに行くくらい。ねぇ、スンリ?まぁまぁ・・・ハニちゃんそんな事をしたら、流産しちゃうでしょ!」
グミはハニが病院から帰って来て、四人目が妊娠3ヶ月と聞いてから、また家族が増えると言って喜んでいた。
「大丈夫ですよ。ミアも手伝ってくれたから。」
ミアはハニと姉妹のように、とても仲が良かった。
ウンジョが入隊中という事で、淋しいだろうと家族(特にハニとグミ)は、ミアを悲しませないように気遣っていた。
「ウジョンにスンミも、本当によく眠っている事・・・・従姉弟同士だから二人は結婚は出来ないけど・・・・・この子たちも幸せな家庭を築いてくれるといいわね。」
ウジョンはウンジョとミアの初めての子供で、スンミより少し遅れて産まれた。
ペク家もスチャン・グミ夫妻、スンジョとハニとその子供たちが三人とウンジョとミアとウジョンで10人家族。
ギドンはペク家から少し離れた所に部屋を借りて、週に何回かはハニ達と夕食を食べていた。
「ハニちゃん、お昼は食べられなかったって言っていたけど・・・・・何か食べられそうな物はあるかしら?」
「すみません、おかあさん・・・・さっき、少しだけなんですけど・・・・・ダメでした。でも・・・・・・ミアが苺を買って来てくれたので、それは食べる事が出来ました。」
妊娠したのではと思っていたから、たった数日しか経っていなかったが、思うように食べ物が受け付けられないからか、ハニは少しやつれた顔をしていた。
「栄養のある物を食べないといけなんだけれど・・・・・・・お兄ちゃんと相談した方がいいかもしれないわね。」
グミのその言葉にハニは、ハッと思い出した。
「そう言えばおかあさん、お昼に吐き気をもよおして、スンジョ君とトイレに行ったんですけど・・・・・・スンジョ君・・・私が吐いている間中、背中を擦ってくれていて・・・・それが移って、スンジョ君も吐いちゃったんですよ。」
「まぁ!!お兄ちゃんが?そうなのぉ~」
グミの目がキラリと光った事に、ハニは気が付かなかった。
幼稚園から帰って来たスンリの着替えをしながら、ハニはスンジョと病院で見たスンリの幼稚園での姿が気になった。
「スンリ・・・・ちょっとオンマとお話しをしようか?」
スンリを抱いてベッドの端に腰掛けて、優しい母親の顔でハニはスンリに話しかけた。
「スンリ・・・・幼稚園は楽しい?」
「楽しい・・・・・けど・・・・・」
何か悲しそうに下を向くスンリが、気になってそっとスンリの顔を上げた。
「けど?お友達と喧嘩したの?」
首をブンブンと振って、目にじわっと涙が浮かんだ。
「スンリ・・・・淋しい・・・・・・・」
「淋しい?お家におばあちゃんもおじいちゃんもアッパもオンマもいるでしょ?」
「でも・・・淋しい・・・・・・オンマ・・大好きなのに・・・・スンミばっかり抱っこして・・・・アッパがいるといつもアッパと一緒に寝ちゃうし・・・・・・・・スンリ・・・・・・一人ぼっち・・・・淋しいも・・・・」
スンミが産まれてまだ手は掛かってはいるが、それまでオンマの側から離れなかったスンリを放っておいたわけでもなく、スンミが眠っている時はスンリの相手をしていた。
たしかに、最近のスンリはスンミが産まれてから、自分でも何でもしようとしているのが判っていたから、ハニは子供が成長したと単純に思っていた。
「そっかぁ・・・・淋しいんだ。じゃぁ・・・・今日から、アッパとオンマの間に入って寝ようか?」
パッと輝くスンリの顔。
成長したと言ってもまだ5歳の子供。
オンマに甘えたい時期でもある。
「うん!!」
急に元気になったスンリ。
「でもね・・・・・・オンマのお腹に赤ちゃんがいるの・・・・・・だから抱っこして眠ってもらうのはアッパにしてね。それから、約束してくれるかな?」
スンリは小さな顔を一生懸命に縦に振って頷いた。
「赤ちゃんが産まれたら、スンリはもう一つ大きいお兄さんになるんだよ。そしたら、今度は一人で眠ってね。」
「いつ?いつもう一つ大きいお兄さんになるの?」
「スンリが小学校一年生になった頃かな?」
その頃になれば、スンリも少しはハニに甘えたい気持ちが無くなるだろうと、ハニは思った。
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