小さなライバル達(スンハ) 32
「そうか・・・・スンリはそんな事を言っていたのか。」
「うん・・・だから、今日からスンジョ君と私の間に寝かせる事にしたの。」
「そうだな・・・・・・5歳か・・・その頃のオレは、女の子の格好をしていたな。」
懐かしそうにスンジョは、苦笑いをしながら思い出していた。
「一番傷付きやすい年齢でもあるから、暫くは一緒に寝るか・・・・・」
仕事から帰って来て、スンジョはハニからスンリが幼稚園でポツンとしていた理由を聞いた。
着替えを終わって、子供たちが待っているダイニングに降りて行くと、家族がテーブルに付いて二人を待っていた
スンジョが席に付くと、グミが作った料理をハニとミアが並べたて、賑やかなペク家の夕食の時間が始まる。
「アッパ!あのね、今度のスンハのバレエの発表会ね、白鳥の群舞に選ばれたんだよ。小学生で選ばれたのはスンハだけなの。」
「あのね・・・スンリね、幼稚園でスンリだけが九九が出来るんだよ。」
「自慢しちゃダメなんだよ。いつもオンマが言っていたでしょ!」
スンハの話しにつられて話すスンリ。
それについていつも一言を言うスンハ。
グミが話してハニとミアが笑い、こんなに楽しい食事は、仕事で疲れたスンジョには、ホッとする一時(ひととき)だった。
ハニと出逢った頃は苦手だった賑やかなこの雰囲気が、今ではそれが幸せだと感じる。
「うっ!!」「ぐっ!!!」
ハニとスンジョが同時に手を口に持って行き、立ち上がってトイレに向かって走り出した。
二人揃って吐き気に見舞われている間、グミ以外の家族は心配そうにトイレの方を伺っていた。
「お母さん、お兄さんたち大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。ハニちゃんの悪阻にお兄ちゃんも一緒に付き合うなんて、仲の良い夫婦の証拠なんだから心配しなくてもいいのよ。ミア、帰ってきたらスンジョをからかうきっかけが出来たじゃない。」
悪戯虫がムズムズと動き出したグミに、いつもは何も言わないスチャンが釘を射した。
「ママ・・・・スンジョをからかうのは止めなさい。スンジョも大人なんだし、子供が見ている所ではプライドが傷付くじゃないか。夫婦の仲が良いのならそれでいいじゃないか。」
グミもスチャンに言われてまでは、流石に動き出した虫を自由にする事は出来なかった。
「お父さん、お母さん・・・ミア・・・食事中にごめんなさい・・・・私・・・ちょっと部屋で休んで来ます。」
ハニはそのまま二階の寝室に上がって行った。
「オンマ・・・・・オンマ・・・・・・・」
具合が悪そうに二階に上がって行ったハニを、スンリは今にも泣きそうな顔で見ていた。
「スンリ、今日からアッパとオンマと一緒に寝ようか?」
「スンリったら赤ちゃんみたい。私がスンリの時は一人で眠っていたのに。」
スンハの言葉に涙を浮かべるスンリ。
「スンハ、自分と人が同じと思ってはいけない。スンリにはまだオンマが必要なのかもしれないだろう。スンリも泣くんじゃない。でも、いつまでもオンマとアッパと一緒には寝れない事は判っているだろ?」
目にいっぱい涙を溜めて、必死にそれを堪えているスンリに、スンジョは優しく微笑んで諭すように話した。
「うん・・・・・アッパ・・・・お友達は・・・・オンマじゃなくてアッパとお風呂に入るって・・・・・・・スンリもアッパとお風呂に入っていい?」
「ああ・・・良いよ。」
途端にスンリは笑顔になった。
考えてみたら、ハニがスンリをいつまでも小さなスンリと思って自分が全てをやってあげなければいけないと言っていたなと思った。
仕事が忙しいと思って子供を育てている時の悩みは、きっとハニは自分に気兼ねをしていた事に、今更ながら気が付いた。
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