小さなライバル達(スンハ) 61
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって!私を誰の娘だと思っているのよ!天才医師ペク・スンジョとひたすら努力のオ・ハニの娘だよ。妹のお世話くらい大丈夫だから。」
「そう?」
ハニは急遽、病院から人手が足りないから応援に来てほしいという連絡を貰って、出て行くところだった。
妊娠中で、前回の出産の事もあり、無理のないシフトにしていたがスンジョの了解を得てミンジュから連絡を貰ったのだ。
それなのに、今日に限ってグミもミアもウンジョの面会に行き、スチャンも会社でギドンは店が忙しくて、家にはスンハとスンリとスンミの三人だけだった。
ハニは、スンハにスンミの食事の用意や、スンハとスンリの食事の用意についての手順を教えていた。
プレイマットの上でスンリと遊んでいるスンミに特に変わった様子がないが、ここ何日かがあまりにも元気がある事が心配だった。
「もしスンミの様子がおかしかったら、アッパかオンマに連絡してね。」
「大丈夫だって!」
頼りになる娘とはいえまだ11歳になったばかりの小学生の女の子。
ハニは丁度今のスンハの年齢の時に、一人留守番をするウンジョが腸ねん転で苦しんでいるのを見つけたのを思い出していた。
大人がいない時に事故や事件は起きる。
不安な気持ちを残したまま、ハニは頼んでいたタクシーが到着すると、病院に出掛けて行った。
「お姉ちゃん、おやつにしようよ。」
「ダメだよ、今オンマが出て行ったばかりだし、お腹は空いていないはずだよ。」
「のろ・・かわいい・・・」
一言ずつ話す事が出来るようになったスンミは、可愛らしい歯がいくつか見える口で、スンハに話していた。
頭の良いスンハでもスンミの言葉は、まだ理解する事が出来ない。
「のろ?ウンウン、可愛いね。」
母の書いたメモを見ながらスンミの相手をしていたが、スンハはまだ何も気が付いていない。
「ねぇねぇ・・・・のろ・・・・・・ほちぃ・・・・」
「スンミには時々様子を見てオシッコをしていなかったら、<赤ちゃんドリンク>を飲ませる事・・・・それから・・・・スンハ達がおやつを食べる時は、スンミには豚さんの箱のお菓子をあげる。ふんふん・・なるほどね・・・・スンミ、オシッコしてるかな?・・・・・・してないけど・・・まっいいかぁ。さっきオンマが替えたばかりだからね。おやつを食べる時は、必ずスンハもスンリとスンミも欲しくなくても水分は摂る事・・・・・あぁ、私たちはこの飲み物ね。」
色違いの水筒が2本用意されていた。
スンミはスンハが相手をしてくれない事に諦めて、スンリと一緒にプレイマットで遊び始めていた。
大人しく遊んでいる弟と妹を確認して、スンハはスンジョの部屋に行き気になる本を取って来る事にした。
スンハの大好きなアッパの机には、難しい本がたくさん並んでいるが、スンハが好きなのは、憧れているパク先生の出版した出産までの胎児の様子の画像が沢山紹介されている本。
いつもその本を好んで見ているスンハに、スンジョが許可した何冊かのうちの一冊。
大切に扱うようにと約束した本を、胸に抱えてリビングに降りて行った。
汗を沢山掻いて遊んでいるスンミの頭をクシャクシャと撫ぜて、ソファーに深く腰掛けて本を見始めた。
夢中になって見ていた事に気が付いたスンハは、弟と妹の方を見るとスンミはプレイマットの上で眠っていた。
だけれどどこか様子がいつもと違う。
赤い顔をして怖いくらいに汗を掻いている。
ハッとしてスンハは時計を見た。
いつもオンマやおばあちゃんが時間を見ながらスンミに飲み物を与えていたが、オンマが家を出てからもう3時間は過ぎている。
その間に一度もオンマの用意しておいてくれたスンミ専用の飲み物を飲ませていない事に気が付いた。
慌ててスンミの傍に行き身体を起こすと、子供でも判るくらいにスンミが熱くなっていた。
「スンミ!!スンミ!!!起きて!ほらこれを飲んで!スンミ!」
姉の慌てた様子にスンリは持っていたおもちゃを落として、動けなくなっていた。
必死に口に哺乳瓶を持って行くが飲もうとしない。
大きな声で名前を呼んでも、妹は目を開けてくれない。
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