小さなライバル達(スンハ) 62
小さな妹スンミが、目を瞑って苦しそうに息をしている。
自分が、本に夢中になっているうちに気が付いたら、ハニと約束したよりもかなりの時間が過ぎていた。
「飲んで・・・・スンミ飲んで・・・・・・お願い・・・・・」
哺乳瓶を口に触れさせるが、スンミの小さな口は少ししか開かない。
ふとそんな時、スンハはある事に気が付いた。
スンジョと一緒に映画を観ていた時の場面を・・・・・
「スンリ・・・・スプーンを持って来て!速く・・・・・・・」
「ぅん・・・・・・・オンマに電話しようよ・・・・スンミ死んじゃう・・・・」
弟を不安がらせてはいけないと思って言わなかった言葉を、苦しそうにしているスンミを見てスンリが口に出してしまった。
「オンマじゃだめ・・・・・・アッパに電話をするのよ。それよりも先にスプーンを・・・・・・・お姉ちゃんがスンミに飲ませている間に、アッパに電話をして。」
スンリが持って来たスプーンに、ハニが用意したスンミ専用の飲み物を入れて、少し開いている小さな口に流し込んだ。
少しずつ、少しずつ滴を落とすように入れると、ゴクンと喉が動いた。
「頑張れ・・・スンミ頑張れ・・・・・・」
よく思い出せば、はっきりしない言葉で何度ものどが渇いていたと言っていた事に気が付いた。
「ゴメンね、お姉ちゃん・・・スンミの言葉が判らなくて・・・・・・もう少し飲んで・・・・・・・」
「あ・・・・・・アッパ・・・・・スンミが・・・・・・・」
<スンミがどうかしたのか?>
スンハではなくてスンリが電話を掛けて来た事に、スンジョはよくない事が起きている事に気が付いた。
「スンミがどうかしたのか?」
電話の向こうのスンリがベソを掻いて、更に子供だけを残してハニが病院に来ている事に胸がザワザワして来た。
「スンハに代わって・・・・・・・・」
スンリから電話を受け取ったスンハにスンミの様子を聞いた。
「そうか・・・・・・とにかく、水分を与えて身体を冷やすんだ。そうだ・・・・・よく判ってるな。服を脱がせてもいいけど汗だけはタオルで拭いて、顔色がいつもの色に変わったら今度は乾いた服を着せるんだ。すぐに家に帰るから・・・・・・」
スンジョに自宅からかかってきた電話の様子を聞いた看護師が、急いでハニを呼びに行った。
「オ看護師・・・・今、ペク先生の携帯に家から緊急の電話が入ったみたいよ。ここはいいからすぐに先生と家に帰りなさい。」
「ありがとう・・・・・ペク先生は・・・・」
看護師にスンジョのいる所を聞いて、急いでその場所まで移動した。
急いで廊下を歩いていると、足早にハニを呼びに来たスンジョと出会った。
「スンジョ君・・・・・何かあったの?」
「スンミが脱水しているみたいだ。スンハにすぐに帰るから、取りあえずの処置だけを伝えた。すぐに着替えて駐車場に来るんだ。」
ハニは諤々とする足をどうして動かしているのか判らなかった。
スンミは体温調整が出来なくて、時間を見ながら水分を与えている。
いつもはグミやミアがいるから安心していたが、急な呼び出しにどうしようもなかった。
大丈夫と言うスンハに任せた事に、後悔をしていた。
「スンミ・・すぐに帰るから・・・スンハお願いね・・・大丈夫だから・・・・・」
涙が滲んで流れないようにしながら、更衣室で着替えた。
「お姉ちゃん・・・・・グスッ・・・・・・」
鼻をすすりながら、スンハの傍でスンミの手を握っているスンリは何をしていいのか判らなかった。
「タオルとスンミの洋服を持って来て、それと窓を開けて・・・・・・・男の子でしょ!泣かないの。小さなスンミが頑張っているんだから、速く!」
スンハは、父に言われた通りにスンミの服を脱がせて、傍に有ったタオルで汗を拭きながらスプーンで水分補給をしていた。
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