小さなライバル達(スンハ) 67

「おじいちゃん・・・判る?スンハだよ・・・」

スンハの知っているスチャンは、大きなお腹でふくよかな笑顔で、いつもスンハやスンリを見守りながら新聞を読んでいるおじいちゃんだ。

痩せて力なく笑うスチャンの顔を不安そうに見ていた。

「スンハか?・・・・・・あぁ・・判るよ。」

泣き虫スンリは今にも泣きそうな顔で、弱っているスチャンが怖くてハニにピッタリと貼り付く様にして隠れていた。

「さぁスンリ・・・・・・おじいちゃんの傍に行ってあげて・・・・・」

「怖い・・・・」

「怖くないよ。おじいちゃんに早く良くなるように、スンリの元気を分けてあげて。」

ハニに手を捉まられながら、恐る恐るスチャンが差し出している手と握手をした。

「スンリや・・・・お前は賢い男の子だ。アッパのように・・・オンマを守ってあげてくれよ。」

震えながらコクンコクンと頷くスンリの手を、滑る様に離したスチャンはスンリの傍にいるハニの顔を見上げた。

「ハニちゃん、ペク家に来てくれて・・・・・ありがとう・・・スンジョの心を救ってくれてありがとう・・・・」

途切れ途切れに話す義理の父の言葉に、ハニは胸が張り裂けそうで涙をこらえながらいつもの笑顔で頷いた。

「ママも・・・淋しくないだろ?可愛いハニちゃんがワシらに沢山の孫と出逢わせてくれたから・・・・」

グミもこれがスチャンとハニの最後の体面だという事が判っているから、涙をこらえて笑顔で頷いていた。

「ええ・・・そうね。ハニちゃんが我が家に来てくれて、すごく楽しかったわよね。さぁ・・・パパも少し休んでね。」

スチャンはグミの言葉に少し笑みを浮かべて、静かに目を閉じた。

「ハニちゃん・・・ラウンジで少しお話ししない?」

「はい・・・」

スンジョと顔を合せる事のない見舞客専用の外来棟のラウンジに三人の子供を連れて移動した。

夕方のラウンジは、外来で訪れる患者もあまりいなくて静かに話す事が出来る。

グミとハニは、スンハとスンリそしてスンミを見ながらお茶を飲んでいた。

「パパね・・・・・来月までもたないかもしれないの。スンジョからは聞いているでしょ?」

「はい・・・」

「見せてあげたいわ・・・・スンジョとハニちゃんの四人目の赤ちゃん。」

「私も、見せてあげたいです。」

グミはうっすらと涙を浮かべながら、目を瞬いて微笑みながら小さな声で話を続けた。

「でも・・・不思議よ。パパとは18歳の時に結婚したのだけど、一度も喧嘩をした事もないの。それだからなのね、今が一番悲しいのかもしれないのに、全然悲しくないの。堅苦しい家に育って、いつも外に出たくて仕方が無かったのに、お勤めどころかアルバイトもしないで専業主婦として外に出る事がなかったのに、全然堅苦し良い気持ちがしないの。結婚してすぐの一年後にスンジョが産まれて三年後にルミが産まれて・・・・でも・・ルミは一年も生きる事が出来なくて・・・・女の子が欲しくて欲しくて仕方が無かった。ルミが亡くなって数年後にウンジョが産まれて・・・・・女の子と縁がないのかなって思ったら、私の理想どうりの娘のハニちゃんが我が家に来てくれて。遠回りはしたけど、スンジョと結婚してくれて・・・・・・それもパパとギドンさんが親友だったから、叶った夢なのよね。パパの方が私よりも15も歳が上だから、順番的に私が跡に残るのだけど、その時が来たら悲しまない様にしてくれたのかなって・・・・・・」

お母さんとこんな風に話した事は今まで一度もなかった。

お母さんと一緒に住み始めて15年が過ぎて、なんだか本当の親子になったような気がする。

憧れていたママとこんな風に話したいという夢が私も叶ったようで、不謹慎だけど嬉しかった。

「お母さん・・・・・悲しい時は泣いてくださいね。私で良ければこれからもお母さんとお父さんの思い出話を聞きますから。」

「ハニちゃん・・・・ありがとう・・・・・さっ!もう帰らないとスンジョにバレちゃうわ。一台タクシーが停まっているから、あれに乗って行きなさいね。私は明日一度家に帰るから。パパの付き添いをミアが変わってくれるって言ってたの。」

「ミアが?ウジョンはどうするのかな?」

「ウジョンは私が見てあげられるし、ハニちゃんもいるから大丈夫よね。」

ハニはグミに見送られて、子供たちと家路についた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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