小さなライバル達(スンハ) 69
おじいちゃんが、天国に召された。
オンマとスンリとスンミで、お見舞いに行った次の月に。
外は若葉が綺麗なのに、家の中は思い空気が漂っていた。
その日は、私の二番目の弟が産れた日。
多分、あの頃の事はずっと忘れないと思う。
「ペク・スンハさん、お家の方が迎えにいらしたから弟さんとすぐにお家の方に帰るように。」
先生の連絡で、咄嗟におじいちゃんが大変な事になったと思った。
校門にスンリの手を引いて向かうと、ククスのおじいちゃんが青い顔をして立っていた。
「ククスのおじいちゃん、どうしたの?もしかして・・・・・・」
「スンハ、車に乗ってから話すから。」
私はククスのおじいちゃんの言うとおりにして、すぐに車に乗り込んだ。
スンリはまだ事情が呑み込めないのか、だけどよくない事が起こった事は気が付いていた。
「おじいちゃんな・・・・・最後かもしれない。ちゃんと笑顔で挨拶をしなさい。」
病院に着くと、ククスのおじいちゃんに手を引かれて病室に入ると、看護師さんや病院の先生が忙しくしていた。
ミアおばさんも・・・・・・・服務中のウンジョおじさんもいるのに、アッパだけいなかった。
「おばあちゃん・・・アッパは?」
「アッパはね・・・・オンマの所よ。」
「オンマの所?」
聞かなくても判った、赤ちゃんが産まれるのだと。
陣痛で苦しんでいるハニの手を握ってスンジョはハニの腰を擦っていた。
「・・・・・・・フゥー・・・・・・・・フゥー・・・・スンジョ君・・・・お父さんの方に・・・・・・行って・・・・」
「大丈夫だ。親父はまだ大丈夫だ。ハニから離れたりしたら、親父も気にするだろう。」
四人目なのに今回は中々産まれず、昨夜から続く陣痛が長引いていた。
分娩室に移る時に、看護師の一人がスンジョに耳打ちをした。
「ご家族がお父様の病室に集まられています。」
スンジョは頷き、今から分娩室に付き添う事を伝言していた。
「パパ・・・もうすぐハニちゃんとお兄ちゃんの赤ちゃんが産まれるのよ。頑張ってね・・・・・・・」
もうほとんど目を開ける事もなく、昏々と眠りについているスチャンだったが、集まっている家族がそれぞれ声を掛けていた。
静かな特別室に聞こえる廊下を走って来る靴音が聞こえて来たと思うと、病室のドアが開いた。
「スンジョ!・・・・産れたの?」
青い手術着を着たスンジョが、産れたばかりの子供を抱いて連れて来た。
「親父・・・・判るか?」
その声が聞こえたのか、スチャンは少し目を開けた。
「元気な男の子だ。名前はハニと決めておいた名前で<スンスク>だ。親父に似ているだろ?」
スチャンはわずかに手を動かして、スンジョとハニの四人目の子供の顔を見て目を潤ませ、その数分後に、目尻から一筋の涙を流して目を閉じた。
アッパだけ、涙を流さなかった。
おばあちゃんもウンジョおじさんもミアおばさんも沢山泣いて、ククスのおじいちゃんは声も出せないくらいに泣いて、私も泣き虫スンリも泣いたのにスンミは小さくて泣かなかったけれど、アッパだけ泣かなかった。
オンマに言ったら、オンマもククスのおじいちゃんと同じように声を出さずに泣いたのに・・・・アッパだけが泣かなかった・・・
0コメント