小さなライバル達(スンハ) 72

スチャンおじいちゃんが亡くなってからの我が家は、特に何ごとも変化がなく平穏な日々が続いていた。

ククスのおじいちゃんのお店は相変わらず繁盛していて、おばあちゃんはフォトコンテストに作品を出す為に撮影旅行をしたりして元気が増している。

私はパラン高校に進学して、毎日楽しい学校生活を送っていた。

スンリはまだ小学生だけど泣き虫ではなくなり、アッパに似て顔が綺麗だとか言われて結構女の子から人気がある。

スンミもスンリも幼稚園に通い始めて、慌ただしい朝にオンマがあちらこちらにぶつかって悲鳴を挙げている。

今日はアッパもオンマもお休みだけど、アッパは書斎に引っ込んでいる事が多い。

私もテスト週間最終日の前日で、ちょっと休憩を取った時に起こった出来事。

<ガシャ~ン!!>

スンジョが書斎にしている部屋からカップを落とす音が聞こえたと思った途端、ハニが泣きながら飛び出して来た。

偶然書斎の近くを通りかかったスンハは、スンジョの書斎の中をソォーと覗き込んだ。

スンジョの机と洋服はコーヒーで汚れ、床には割れたマグカップが散乱していた。

「アッパ?どうしたの?」

「何でもない。ドアを閉めておいて。」

「はい・・・・・」

スンハはこんな両親を初めて見た。

いつもは、ハニがスンジョを尊敬の眼差しで見て、スンジョは幸せそうにハニを見ている。

眉間にしわを寄せているスンジョを、きっとハニでも見た事がないだろう。

スンハは、書斎から泣きながら飛び出し、寝室に入って行ったハニの後を目で追った。

「おばあちゃん・・・アッパ達、どうしたのだろう。」

「どうせアッパがオンマに意地悪を言ったのよ。」

おばあちゃんが言うには、結婚する前に一緒に住んでいた時からアッパはオンマに意地悪を言っていたらしい。

でも私は最近元気がなくて、体調が悪いと言ってよくベッドで休んでいるオンマが心配だった。

「ソゥッと、オンマの様子を見た方がいいよね?」

少し開いていたアッパ達の寝室の中を覗くと、オンマがスーツケースに着替えを詰めていた。

「オンマ!どこに行くの?」

私が、泣いているオンマの傍に駆け寄って聞くと目頭を押さえて涙を見せないようにしていた。

「しばらく、旅行に行くから・・・・・・・」

そう言ったオンマは涙を流していた。

「旅行って・・・・聞いていないよ?明日は体育祭があるから朝少し仕事をしてから見に来てくれるって言っていたよね?」

「旅行は・・・・・・今、決めたの。体育祭は・・・・・今年は行けなくなったの・・・ごめんね。」

アッパと何かあった事は、子供の私でも判っていた。

旅行に行くなんて、嘘に決まっている。

だってオンマは、明後日は仕事だし一人では旅行なんて行かないから。

旅行は、長期休暇をアッパとオンマが揃って取れた時しか行けないから。

「スンリ・・・・久しぶりに、兄弟同盟が復活だよ。」

オンマがいなくて静かな上に、何もしゃべらなくて不機嫌が見ても判るくらいに息の詰まる雰囲気の中での夕食をサッと終えて、部屋に引き上げる時にスンリにそう伝えた。

今回の兄弟同盟は役にあまり立たないけど、3歳のスンミと2歳になるスンスクにも手伝ってもらう事にした。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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