小さなライバル達(スンハ) 73
オンマは昨日の夜、家に帰って来なかった。
スンミはオンマがいないから眠れないという事は無かったけど、まだ小さいスンスクはずっと泣いていた。
おばあちゃんが、アッパに怒りながらスンスクと一緒に眠ったけど、アッパは不機嫌な顔のまま黙っていた。
「アッパァ~・・・・・・」
スンミはクマの付いたゴムを持って行き、スンジョがネクタイを結んでいる様子を不安そうに眺めていた。
さすがのスンジョもまだ幼いスンミには冷たく出来ない。
「どうした?」
「髪むしゅんで・・・・」
スンミの柔らかな髪を、ブラシで梳いて三つ編みをしてクマの付いているゴムで結んだ。
「ここ・・・・蝶々つくるの・・・・」
「蝶々?ゴムにクマが付いているだろ?」
「違う!髪で蝶々つくる!」
スンジョはスンミが何の事を言っているのか一瞬わからなかったが、時々ハニがスンミの髪の毛を細く三つ編みをして丸く象っている事を思い出した。
いくら器用なスンジョでも、スンミの細い髪の毛では普通の三つ編みが精一杯だった。
ハニが出来る事はオレより少ないが、オレ好みのコーヒーの淹れ方と髪の毛を纏める事だけは誰にも真似が出来なかったな。
「今日は、オンマがいないからこれで我慢しなさい。」
「ふん!ダメね、アッパは。」
こましゃくれた言い方で、プイッと向きを変えてスンミは部屋を出て行ってしまった。
身体の弱かったスンミは同じ年齢の子供よりも細くて小さいが、誰に似たのか生意気な口の利き方に、不機嫌な顔をしていたスンジョはクスッと笑った。
元々四人いる子供の中で一番スンミがハニに似ているから、スンジョはスンミを一番可愛がっていた。
「ハニのヤツ、本気で怒ったのか。仕事は休む事はないが・・・・・・オレの今の状況をどうして判ってくれないのだろうか?」
スンジョにはスンジョの、ハニにはハニの事情はあるが、忙しくて時間が取れないとお互いの事を気に欠ける余裕を持つのは難しかった。
病院に行ってもスンジョは患者を診察したり治療をしたりはしているが、担当患者以外は後輩医師に任せて、教授昇進の為の資料のまとめや論文を書く事が忙しく部屋に籠っている事が殆どだった。
大変な時期だからハニも判って部屋には来ない様にしていたし、家に帰っても書斎にはお茶を持って来るだけで、会話らしい会話をした事が最近は無かった。
些細な事でも気にするハニだという事はよく判っていたし、昨日幼い子供を残して家出をしたハニを昔みたいにそのままにしておく事は出来ない。
ナースステーションを覗きに行くと、ハニは机に向かって自分の担当患者のカルテを纏めていた。
「オ看護師・・・・ちょっと話がある。」
聞こえているはずが、ハニは全く聞こえないふりをして用もなく引き出しを開けたり閉めたりしていた。
他の看護師がいない事を確認すると、スンジョは部屋の中に入りハニの腕を掴んだ。
「ハニ、こっちを向けよ。」
腕を引っ張られて、ハニが振り向いてスンジョの顔を見た。
泣いた事が一目瞭然で、目が赤く充血して腫れていた。
「何よ!スンジョ君は、私より出世の方が大変で相手にしたくないのよね。」
今回のハニは、いつもと違いかなりご機嫌が悪くて手古摺りそうな予感がした。
一方スンハは今日の体育祭の準備をしながら、兄弟同盟の作戦を考えていた。
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