小さなライバル達(スンハ) 74
「何よ!放してよ!手を放してよ午前中に終らせないとスンハの体育祭に行けなくなるじゃない・・・・・・」
無言でハニの腕を握って、廊下を急ぎ足で歩いて非常階段の方にハニを引っ張って行った。
入院患者の殆どは、スンジョとハニが夫婦だという事を知っているから、朝から仲良く手を繋いでいると思っていた。
非常階段の踊り場は、秋風が少し肌寒く感じて、ハニはブルッと震えた。
「何よ!そんな風に不機嫌そうな顔で私を見て・・・・・・睨んだって怖くないんだから・・・・・」
そう強がってもハニの本心は、不機嫌な顔のスンジョが怖かった。
拳を爪が食い込むように握ってスンジョの視線を外した。
「母親が子供を放っておいて、外泊か?子供じみた事を言って、オレにどうしてほしいんだ?」
「心配してくれるの?スンジョ君はそう言いながらも、自分の出世ばかりで子供や私たちの事なんかどうでもいいんでしょ?」
声を潜めて話していても、怒って興奮しているハニの声は、下を通っている人にも聞こえるくらいだった。
「家族を思っているから、仕事をしてる事くらい判るだろう?まぁ・・外泊しているって言っても看護科からの仲間か、ミナかジュリくらいだろぅ?」
あぁ・・・・オレはこんな事を言っていけない事くらい判っているのに、どうしてハニをさらに怒らせる言い方しか出来ないのか?
『ハニの話を聞いてあげなくてゴメン』と一言言うだけじゃないか。
「そうよ・・・でも泊まったのは女性の部屋じゃないわ。シヌの部屋だって昔泊まっていた事も、一緒に暮らした事もあるし・・・・・・この間会ったけどシヌは相変わらず私には優しいわ。それにギョルだって・・・・・・私が頼めば泊めてくれるわ。二人ともまだ結婚していないから、その責任は私が負うのだから、もういいでしょ?スンジョ君はプライドが高いから、自分が嫉妬した人に聞く事なんて出来ないんでしょう?これでいい?私は、スンハの体育祭に行きたいから、仕事をしに戻るから。」
ハニはそう言うと、中に入りナースステーションに向かって走って行った。
数日前から、何か考え込んでいた事は知っていた。
非常階段のドア越しにハニが見えた。
誰かに笑いながら話をしているように見えた。
その先にはギョルが立っている。
まさか・・・・な・・・・
ハニは不貞をしないと判っているが、このところ論文作成に忙しくてハニとの時間がほとんどない事と、ハニの事を好きなギョルの気持ちと笑いながら話しているハニの顔を見て、もしかして・・・・と言う思いが一瞬湧いた事にスンジョは不安を感じた。
「スンハ!頑張ってね!!おばあちゃん写真を沢山撮ってあげるから。」
「ありがとう、おばあちゃん。」
いつもなら少し遅れてハニがスンハの応援に走って来るが、今日はハニが来てくれるのか判らなくて少しスンハは心配になって来た。
「オンマ・・・・・来てくれるかなぁ・・・・・・・」
弟たちの事を思って家では不安そうにしていないスンハも、オンマが夜勤以外に外泊をした事がない事が心配になって来た。
「来てくれるわよ・・・・困ったものよね・・・アッパはオンマがいないとダメなのに・・オンマを泣かせて・・・・・」
そんな会話をしているグミとスンハを、木陰からハニは眺めていた。
「スンハ、ごめんね。もうしばらく考えたい事があるから。来週には帰るからね。」
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