小さなライバル達(スンハ) 78
ハニのやつ、どうしてパランで診てもらわなかったのだろう。
どこが悪いんだ?
**クリニック?聞いた事のない病院だ。
スンジョはパソコンで探しても、検索に掛からなくて少し苛々した。
廊下をガラガラとキャリーバックを引いている音がし、続けてゴットンガッタンと大きな音が聞こえた。
「どうした?」
スンジョが部屋のドアを開けて、階段の方を見るとスンリが三泊するくらいの大きなキャリーバックを降ろしていた。
「あっ・・・・・今からバスに乗って、オンマの代わりにスンミとスンスクの紙おむつを保育園に持って行くんだ。」
背が高いとはいえまだ小学3年だ。
いくら同年代の子供に比べて背が高くても、力はまだ体格程はない。
スンリの手からキャリーバックを取り、軽々とスンジョはリビングまで運んだ。
「アッパ、今から出掛けるから持って行くよ。」
たった一日ハニがいないだけで、仕事から帰ってどれくらい子供の事を一人でやっていたのか今更ながら知った。
自分は家に帰って子供の事をハニに任せて、持ち帰った仕事をしている事が多かった。
「ちょっと出掛ける。」
「今から?そのキャリーバックを持っているって言う事は、保育園に行くの?」
「夕食は待っていなくていいから先に食べさせてやって。」
急いで出掛けて行くスンジョの後姿を見て、スンハとスンリはガッツポーズをとった。
「おばあちゃん、アッパきっとオンマを捜しに行くんだよ。」
「そうみたいね。大体素直に『ごめん、悪かった』と言えば済む事なのに、変なプライドがあるからいけないのよ。さぁ、私たちは二人が帰って来た時の為に、サプライズを考えておかないとね。」
家の中とは対照的にスンジョは依然と不機嫌な顔のままだった。
**クリニック前の駐車場に車を停めて、目の前の建物を見上げた。
ハニはどこでこの病院を見つけたのだろう。
パランからも家からも方向が全く違うこの場所にどうして来たのかスンジョは不思議に思った。
病院のドアを開けて中に入ると、すべての診察が終わったのか、誰も待合室にはいなかった。
受付の小窓をノックすると、40代くらいの看護師が顔を覗かせた。
「何か?」
当然と言えば当然だろう。
女性の診療科だから、時間外の男性の訪問にはそう聞くだろう。
「オ・ハニの夫ですが・・・・・・」
「あぁ・・ご主人様ですか・・・直ぐに案内しますね。」
看護師は受付のドアから直ぐに出て来て、スンジョをハニがいる部屋に案内をした。
病院の廊下は古いが、掃除の行き届いた清潔感が伝わるような廊下だった。
「奥さんを泣かせないでくださいね。」
「えっ?妻はどうしたのですか?」
「直接、お聞きになられた方が良いですよ。」
病室と思われるドアの前で看護師はそう言うと、ドアをノックした。
「オ・ハニさん、入りますよ。」
病室に入るとベッドの上で泣いているハニがいた。
ドアが開いて、スンジョが来た事に驚いたハニは、ベッド上で身体を強張らせた。
看護師が病室のドアを閉めたのを確認して、スンジョがハニに尋ねた。
「で・・・・オレに内緒でどうしたんだ?」
出来るだけ精一杯優しい口調で言ったつもりではあった。
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