小さなライバル達(スンハ) 82
「兄妹を増やさないでって・・・・・・兄妹が多いのは嫌なの?」
「う・・・・ん・・・・・私は嫌じゃないけど・・・・・・アッパとオンマが仲が良いから兄妹が多いんだけど・・・・スンリが同じクラスの男の子からからかわれているの。お前のアッパとオンマは何人の兄妹を作るのかみんなで賭けをしてるから、頑張ってもらえよって・・・・・」
クスッと笑うスンジョの横でハニはあんぐりと口を開けてスンハの話を聞いていた。
何も言わない両親の顔をスンハは見上げた。
スンジョは笑いを堪え、ハニはどうリアクションを取ったらいいのかあたふたしていた。
「おかしい?」
「ああ・・・・・おかしい・・・・スンハとスンリがそんな馬鹿な事で賭け事をしている人間に負けているのがおかしい・・・・・・ククク・・・・・」
「負けてる?」
スンハもスンリもIQはスンジョ程ではないが高く、間違いなく同年代の子供よりも記憶力は良い方だ。
「スンハはパク先生のような産科の先生になりたいって言っていたよな?」
「うん・・・・アッパみたいな外科の先生じゃなくて、パク先生みたいな赤ちゃんが誕生する時に立ち会える産科の先生になりたい。」
スンジョは自分の机からスンハがスンジョの部屋に来てよく見ている、胎児の成長が掲載されている本を広げた。
「見た事はあるよな?」
「うん・・ある・・・・・」
3D画像の胎児の写真は結構生々しく、初めて見るハニはゴクンと唾を飲んだ。
「今、オンマのお腹の中にいる赤ちゃんはまだほんの小さな塊にしか見えない。でも・・・・・・・もうあと数週間もすればこの写真みたいに顔も目もはっきりしてくる。」
スンジョはその写真を広げたまま、今度は自分の鍵のかかっている引き出しを開けて一枚のエコー画像を取り出した。
その写真を見た時、ハニは急に胸に深い思いが込み上げて来た。
「スンハとスンリの間に本当は産れる筈だった赤ちゃんがいた。スンハは小さくて覚えていないかもしれない・・・・・・・・・」
「スンジョ君、スンハニそんな事を言ったら可哀想・・・・・・」
その写真をハニが取り上げようとした時、スンハの方が先に写真に手が届いた。
「どうしたの?この赤ちゃん・・・・・・」
今思い出しても忘れる事の出来ない事故。
「ちょっとした事故で、オンマのお腹にいる事が判って30分もしないうちに・・・いなくなったんだ。」
「いなくなった?」
あれから随分経ってもハニは忘れる事が出来なかったが、スンジョが産まれる事の出来なかった子供のたった一枚の写真を、鍵のかかった引き出しに入れていた事をハニは知らなかった。
「流産したんだ。まだ本当に小さくて・・・・・今のオンマのお腹にいる赤ちゃんよりも小さくて。」
「だからどうして兄妹が多いの?赤ちゃんが出来ない様にすればよかったのに。アッパなら天才だから・・・・・・・・」
「まぁ・・・そうだけど、オンマは産れなかった子供の事を忘れる事は出来なくて、おまけにもう赤ちゃんは出来ないかもしれないとパク先生に言われていたから、スンリが出来た時は本当に喜んだんだ。それだけでもない、アッパとウンジョおじさんの間に妹がいた・・・・・」
その話はスンハも祖母のグミから聞いていて知っていた。
心臓が悪くて一歳になる前に亡くなった赤ちゃんの話し。
「一歳になる前に死んじゃったんだよね。」
「よく知っているな。その子へのおばあちゃんの思いと、ミアおばさんはウジョンを産んだ時に無理をしたから、もう赤ちゃんは産めないんだ。その思いが有るから、特にスンハが思うような措置は取らなかった。兄妹が多くて何人になるかを賭け事にされているのが嫌かもしれないが、オンマやおばあちゃんとミアおばさんの願いで舞い降りた天使だ。どの子も大切な天からの贈り物なんだよ。だから、産れないような措置も取らないし、輝いている灯火を消す事もしない。沢山の子供がいる事はその家の幸せだと思う事は出来ないかな?」
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