小さなライバル達(スンハ) 84
「人間って・・・・・・・どやって僕たちが産れたのかなんて、知らなかったんだ。皆はお前の家は子供が多いから、親に構ってもらう事なんて出来ないだろうって・・・言われた。」
「それが拗ねている理由?」
スンリはまた首を横に振った。
「違う・・・・だって僕のオンマは、アッパの子供だから大好きだよって言ってるし。それに僕はオンマが好きだから産れたとは思っているよ。それなのに覚えていないんだ。僕・・・・オンマが大好きなのに・・・オンマもスンリはアッパに似ているから大好きって言ってくれているし。」
スンハはスンリのそんな思いが不思議だった。
自分はパク先生みたいな産科の先生になりたいのに、そんな風に思った事がないから。
「おばあちゃんが言っていたけど、アッパとオンマは二人揃っていないと輝けないんだって。」
「輝く?」
「うん・・・・アッパは頭は良いけど、人を思いやる事が苦手で自分の気持ちを表すのが苦手で、他人(ひと)冷たく思われていて・・・・オンマは知識は小学生のスンリと同じくらいだけど、心がピュアで温かくて見返りを求めないで自分の信じた道をひたすら努力して進むの。そんな二人が一緒にいると、輝いて見えるわよって・・」
スンリはスンハの話を尊敬するような顔をして聞いていた。
ちょうど、ハニがスンジョの話をそんな風に見ている様に。
「アッパは人を思いやる事が今でも苦手で、私たちにも素っ気ない態度を取るけどそれは私たちを信じているから、自分を信じているオンマの子供だから素っ気ない態度を取っても、判ってくれるって。そう思っているんだよ。」
ギシッと言う音で二人が振り向くと、いつの間にかハニとスンジョがそこにいた。
「スンリ・・・オンマはスンリの事を構わなかったのかなぁ・・・・・」
スンリの視線に合わせるようにハニはしゃがんでスンリを抱きしめた。
「オンマは器用じゃないから・・・スンリに淋しい思いをさせていたんだよね。まだ5歳の小さい時にスンミが産まれて・・・・スンミが家で産れた時はスンリも手伝ってくれたのも知っているよ。スンミの身体が弱くてスンリの事をあまり見てあげられなくて、それなのに仕事に復帰しようと思ったらまたスンスクがすぐに出来ちゃったから・・・・その頃にはいつの間にかスンリは小学生になっていたから、もうオンマがいなくても大丈夫と思ってごめんね。」
抱きしめたスンリの小さな手がハニの背中にグッと力を入れ来た。
シクシクと泣いているスンリの声は次第に大きくなって、暫くは何も言わなかった。
「スンリはアッパによく似ているから・・・言えないんだよね。もっとオンマに甘えたいって。言っていいんだよ。今、オンマのお腹に赤ちゃんがいるんだけど、また淋しい思いをさせちゃうかもしれないけど、淋しい時は淋しいって言っていいんだよ。」
スンリは淋しい淋しいと言って暫くの間はハニに抱きしめられたまま泣いていた。
そのままスンリはハニに抱きしめられ、母の温かい胸の中でいつの間に泣き疲れて眠ってしまった。
大きくなったと言ってもまだ小学三年生。
淋しいと言いたくてもまだ下に妹と弟がいるから我慢をしていた。
それをクラスの友達が、構ってもらえないと言った事で、自分の我慢していた淋しいという感情をどう表現していいのか判らなかったのだ。
静かにスンリの部屋のドアを閉めて、ハニはスンジョを見上げて微笑んだ。
「スンジョ君と同じだねスンリは・・・・・。自分の思った事を人に伝える事が出来なくて、だから言いたい事も言えなくて・・・だからスンリを見てもっと私の方から気が付いてあげようと思ってたのに・・・・・・・・」
ハニが一瞬悲しそうな顔をした時、スンジョは思わずすぐそばにスンハがいる事も忘れて、ハニの唇にキスをしようとした。
「ゴホン!!ここに娘がいるんですけどねぇ・・・・・・・」
ビックリして後ろを振り返るとスンハがニヤリと笑っていた。
あたふたとする母は見慣れているが、照れた顔をした父を見たのは初めてだった。
「じゃあ・・・私はもう自分の部屋に行きますから。思う存分キスしていただいて熱ぅ~い夜を過ごしてくださいね。」
「スンハ!!」
スンジョの怒る声を聞きながらスンハはおばあちゃんが二人の話をするのを愉しんでいるのが判ったような気がした。
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