小さなライバル達(スンハ) 98
「オンマの携帯が鳴っているよ。」
「誰?誰からかかっているの?オンマ、今手が離せなくて・・・・・・ほらスンスク、ちゃんと身体を拭かないと風邪をひくでしょ。」
ウンジョにお風呂を入れてもらったスンスクの身体を拭きながら、ハニは身体を拭くのを嫌がっているスンスクに苦戦していた。
「アッパ?スンハだけど、オンマねスンスクがお風呂から出て来たから身体を拭いているの。」
<オンマの具合に変わりはないか?>
「オンマ?いつもと変わりないよ。」
<そうか・・・・・アッパ、明日の夕方には帰るからって言ってくれるかな?・・・・・これからまた人と食事に行くから連絡が出来ないけど・・・メールして・・・・・明日の連絡先は、今から言う電話番号が受付だからそこに掛けて、010-****-####だ。『家族だけど緊急』と言えばいいから。>
「うん、わかった。」
スンスクの身体を拭き終ったハニがスンハの傍まで来た。
「電話は誰だった?」
「アッパがね、オンマの具合はどうだ?って・・・・アッパは心配性だね。」
スンジョの事を心配性だと言ったスンハの言葉が可笑しくてクスッと笑った。
「可笑しいの?」
昔のスンジョ君の事を思うと、信じられないくらいに最近は優しくて自分の事を心配してくれる。
自分をからかっては泣かせていたなんて、子供たちはそんな事は知らない。
子供たちにはいつもオンマの心配をしている優しくてカッコいい自慢のアッパ。
言わないでいた方が良いよね?スンジョ君の昔を知ったら子供たちは驚くはずだから。
スンジョ君の過去は私だけの秘密だからねスンハ。
おばあちゃんも知らない事をオンマは知っているから。
「何を一人で笑っているの?またアッパの事を思い出しているんでしょ?」
ハニは今でも時々自分だけの世界に入り込んでいる事が有る。
スンハの年齢になると、オンマがアッパの事を思い出して、夢の世界にいる事がよく判っていた。
こうなった時はスンハはハニをそっとしていた。
「・・・・・・ん・・・ん・・・う・・・・・」
前兆はあったが、深夜過ぎてからはっきりと陣痛が始まって来た事に気が付いた。
「陣痛が始まった・・・・・スンジョ君・・・・・・明日の夕方にしか帰れないんだった・・・・・」
ハニはベッドから起き上がって、離れにいるグミに電話を掛けた。
<モシモシ・・・ハニちゃん?・・・陣痛が来たの?>
「ええ・・・・・まだ間隔は開いているんですけど・・・・・・スンミの時の事もあるので、スンジョ君が早目にって・・・・・・・・・」
<すぐにそっちに行くわ。お父さんにも電話を掛けてから行くわね。>
「・・・・・お願いします。」
スンジョ君にも知らせた方がいいかな?
ダメだよね・・・大事な会議だって言っていたから・・・・・・・またスンジョ君は立ち会えないね。
淋しいな・・・・・・
「ゾウさんは、ノッシノッシと歩いていたら、急に淋しくなって、早く帰って来てパパと泣いた。」
スンミとスンスクが読んでいた絵本の言葉がハニの頭から離れない。
今まで、普通にスンジョが立ち会う事が出来た出産は無かったが、それでも遠く離れた事はなかった。
スンジョ君・・・・・怖い・・・・淋しいよ・・・・・早く帰って来て・・・・・
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