小さなライバル達(スンハ) 100
ハニが病院に行ってから気が付けば夜が明けて朝日が昇り始めていた。
「奥さん・・・夜通し起きていらしたんですか?」
「ギドンさん・・・・・もうそんな時間なんですね。何だか眠れなくて・・・・・6人目の孫なのに、スンジョがいないからなのか・・・心配で・・・・・すぐに朝食の準備をしますね。」
「自分でしますから、奥さんは休んでください。病院から電話が掛かったら私が出ますから。」
「お母さんそうしてください。家族の食事の準備は私がしますから。」
「お言葉に甘えて、ミアとギドンさんにお任せして休ませてもらうわね。」
グミは二人に朝食の準備を任せて、離れに戻って行った。
ウンジョが起き、スンハ・スンリと起きて来ても病院から何の連絡もない。
「ミアおばさん、オンマは?」
「夜中に陣痛が始まって・・・・スンハは判るよね?」
産科医になりたいスンハはコクンと頷いた。
「おばあちゃんと病院に行ったんだけど、でも・・・・まだ産まれそうになくて、オンマを病院に置いておばあちゃんだけが家に帰って来たの。」
「オンマ、一人で病院にいるの?」
「ウジョンとスンミとスンスクを保育園に連れて行ったら、オンマの所に行って来るから大丈夫よ。アッパも夕方には帰って来られるはずだから。」
スンハとスンリは4年前に産まれたスンミの時の事を思い出していた。
苦しそうにしていたオンマの顔を思い出し、アッパがいないい時にオンマが苦しむと思うと心配になって来た。
それでも子供の自分たちには、どうする事も出来ない。
オンマを心配しながら、二人はいつも通りに学校に出掛けた。
病室のベッドで、何もする事がなくハニはボンヤリと窓から外の景色を見ていた。
あ~ぁ、陣痛も遠のいちゃって・・・・・スンジョ君、昨日電話で病院に入った事を言ったからきっと心配をしているんだろうな・・・・・
・・・・・・・あっ・・・お腹が・・・・時計・・・時計を見える所に置いておかないと・・・・
陣痛が遠のいたと言っても我慢が出来る程度の陣痛はあるし、いつ産まれてもおかしくない時期。
時々お腹が引っ張られるような痛みがはっきりと判るようになって来た。
・・い・・・・たた・・・・急に感覚が・・・・・・痛い・・・・お腹が痛い・・・・
「お義姉さん・・・・?」
ミアが病室のドアを開けて入って来た。
それに続いてグミも入って来て、ハニが痛みを堪えているのに気が付いた。
「間隔はどれくらい?」
「まだ・・・・まだ・・・・・・ふぅ~・・・・・まだ30分以上開いているんだけど・・・・痛くなると我慢が出来ないくらいに痛くて・・・・・・・・何だか赤ちゃんが出て来そうで・・・・・」
「それはいけないわね。今、看護師さんを呼んで来るわね。ミアちゃんハニちゃんをお願いね。」
ミアはグミが看護師を呼びに行くのを見て、ハニの手をしっかりと握った。
「お母さん、ナースコールで呼んでくれればよかったのに・・・・・・・・」
今は痛みが無くても、前回までとは違う感覚にハニの白い顔がさらに白くなっていた。
「お義兄さんに連絡を取りましょうか?」
「夕方には帰って来るって言っていたし・・・・・・さっきメールを送信したから、時間が空いたら返信をくれると思う・・・・・・たたた・・・・」
廊下を看護師と一緒にこちらに歩いて来る足音が聞こえ病室のドアが開いた。
「内診をしますね。ご家族の方は暫く廊下で待っていてください。」
「うちの嫁がこんなに痛がっているのに、傍にいてはいけないのですか?」
「内診で、状況を見てそれからパク先生に連絡します。」
慣れた産科の看護師はハニの先輩看護師でもあった。
「お母さん大丈夫ですから・・・・・」
ハニの言葉にグミは渋々と廊下に出て待つ事にした。
「オ看護師・・・・・・失礼します。力を抜いてください・・・・・・」
内診をされている間だけ不思議と痛みが和らいでいた。
「いつもと痛みが違って・・・・・腰が引っ張られそうで・・・・・・」
「間隔は?」
ハニはこの看護師は苦手だった。
いつも事務的で温かみのない物の言い方は、不安になりやすいハニにとって余計と不安が増していく。
「30分です。」
「頭が出て来ているんですけど、まだ開いていないから夕方から夜にかけてですね。四人も産んでいるんですから、我慢してください。」
「でも・・・・すごく痛くて・・・・」
「お産は痛くて普通です。2日も陣痛が続く人だって結構いるんですからそれくらい我慢してくださいね。」
「は・・・い・・・・ぅ・・・・・・・」
痛みを堪えながらハニは心の中で呟いた。
先輩は子供を産んだ事がないから、この痛みが判らないのよ!!
いつもなら声に出てしまうハニだが、陣痛の痛みで声が出ない事が幸いしていた。
スンジョ君・・・メールちょうだいよ。痛くて・・・・・死にそう・・・・
0コメント