小さなライバル達(スンハ) 108
セッセとハニは何やら荷物を大きな鞄に詰め込んでいた。
「お母さん、このケーキ持って行きますね。」
「いいわよ、それはスンハのだから。」
昨晩、ペク家では恒例のクリスマスのパーティをやっていた。
毎年そのパーティにはスンハの姿もあったが、今年は独り暮らしをしたいと言って家を出てから、スンハのいない初めてのクリスマスだった。
「来なかったわね、スンハ。」
「帰って来るように言ったんですけどね。」
メモに書かれた物を確認してハニはそれを鞄の中に入れた。
「スンジョに頼まれたんでしょう?」
「どうして判ったんですか?」
「判るわよ、スンジョを育てた母親ですよ。あの捻くれ者のスンジョが、素直に愛娘が心配だから見に行けとは言わないわよね。」
ハニは今朝スンジョがスンハの様子を見て来るように言った時の事を思い出していた。
「そうですよね。」
スンジョから貰ったメモを見ながら、ハニはその時の顔を思い出しておかしくて仕方がなかった。
ハニはスンジョに頼まれたスンハに渡す物と、自分が仕事で使うために必要な本を取りに、スンハが今使っているスンジョの仕事用の部屋にやって来た。
何度もここには来た事が有るから、どこに何があるのかは覚えの悪いハニでも頭にインプットされている。
この部屋をスンジョがスンハに貸した時に、本は読んでもいいが同じ場所に片づける事は守るようにと約束をさせていた。
それともう一つ『絶対に他人を入れて騒ぐな』を何度も言っていた。
再版が出来ない本や大切なデータの入ったメモリーカードにファイリングされた資料をスンジョから渡されたメモを見ながら探していた。
ふとスンジョが使っている机の上にスンハの物ともスンジョの物とも違うジャケットが置かれていた。
「誰の?男物だよ・・・・・・スンハったらこの部屋に誰か入れてるのかな?」
その時、玄関のドアを開けてスンハが誰かと話しながら入って来た。
「あれ?開いている・・・・・ねぇ・・・・今朝出掛ける時に鍵を掛けたよね?」
「泥棒か?」
男の人の声?
咄嗟にハニは机の下に隠れようと入り込んだ。
スンジョの部屋はワンルーム。
部屋の中に二人並んで上がり、机の上にスンハが鞄を置くと二人の身体が一つになった。
えっ・・・・・・何?スンハ何をしているの?
ハニはそっと机の下から顔を少し出して見上げた。
うそっ!
見てはいけない物を見てしまったハニは尻餅を付いた。
____ガタン
その物音に二人の身体はパッと離れた。
「誰?」
ゴソゴソとハニは机の下から這い出て、二人の間に入る形で立ち上がった。
「オンマ!」
「お母さん・・・・・?」
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