小さなライバル達(スンハ) 110
一年くらい前からだろうか、誰かの視線が妙に気になる。
元々、幼い頃から何かにつけて人々の注目を浴びる事が多かったから、ある程度は慣れているが・・・・・慣れてはいるが好きではなかった。ただ、ハニの視線だけは特別だけど。
アイツの視線はオレにとって、今では精神安定剤だから。
「教授・・・・どうされたのですか?」
「あぁ・・・何でもない。」
「<教授の幻の微笑>・・・・・私は初めて見ましたが、すごく良いですね。」
<教授の幻の微笑>とは何の事か最初は知らなかった。
スンハに聞いて初めて知った言葉だ。
病棟の方では誰からも言われないが、大学の方に来ると度々そう言われていた。
アッパが時々≪フッ≫と何かを考えながら笑うでしょ?
それを大学では<教授の幻の微笑>って言うの。
その時は何を考えてるの?
と聞かれたと事が有った。
理由など言えるはずないだろう、他人には当たり前だけど、ましてやハニとよく似た大きな目の娘にだって。
ハニの事を考えていると自然と笑みが漏れる・・・何て・・・・
一年くらい前から気が付いた視線は、月一の全学年共通の講義の時に特に気になる。
オレの講義は人気のある講義らしく、看護科から医学部までの学生が聴講する。
それも抽選で決められているらしい。
ただ、成績が上位の学生は抽選をしないで、優先的に決められるらしい。
講義には当然娘のスンハも出席している。
ハニが願ったからなのか、頭はオレに似ている。
外見は・・・・・やはりオレに似ていて、ハニが最初の子供だからなのか特に愛情を注いでいた。
そう、この視線だ・・・・・
「ウ先生、今発表している学生の次の学生は・・・・・」
「えっと・・・・・あぁファン・インスンですね。第二のペク・スンジョと言われているんですよ。先生ほどIQは高くはないですが、学力は常にトップで、とても勉強熱心な学生です。そうそう・・・彼はテニス部でお嬢さんと混合ダブルスで2年連続優勝していますよ。」
なるほど・・・・第二のペク・スンジョか・・・・だからオレが気になって、視線を送って来るのか。
インスンの前の学生の発表が予定されている時間を大幅に過ぎてしまったため、スンジョはインスンの発表を聞く事がなく病院の方に行かなければいけなかった。
二時間続けての発表の時間だったが、大学で発表をしている学生の発表が伸びてしまえば、その学生にコメントをする時間がない時もある。
病院でスンジョの予約診察を待っている患者が多く、インスンが発表をしている時にはスンジョはその講義室にはいる事はなかった。
「ハニ、第二のペク・スンジョって知っているか?」
いつものようにスンジョの腕枕に落ち着いているハニに聞いた。
ハニはビックリして勢いよくスンジョの顔を見上げた。
「だ・・・だ・・第二のペク・スンジョ?」
「何をどもって動揺しているんだ。オレよりその第二のペク・スンジョが気になるのか?」
「ち・・・違うよ。」
スンジョは自分が他の女になど興味がないのと同じように、ハニが自分より他の男に興味を持たない事くらい知っている。
「名前は・・・知っているよ。すっごく頭がいい・・・でも、スンジョ君程ではないけど。ねぇ・・・・彼がスンハの彼氏とか恋人だったらどうかなぁ・・・・・・。」
「ダメだ。勉強熱心だが、それだけだ。じゃじゃ馬のスンハとは合わない。」
「でも・・・・テニスで・・・。」
ハニのオデコにスンジョが軽くキスをすると、今でもハニは顔を赤らめる。
「何かあるのか?ファン・インスンと。」
「な・・・名前・・・・知っているの?」
「知っている。」
ハニの知っていると、スンジョの知っている。
同じ意味で言ったのか違う意味で言ったのか。
スンジョにスンハがクリスマスの夜一緒に過ごした事がバレテしまうのではないかと、ハニは急に心配になって来た。
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