小さなライバル達(スンハ) 112
窓の外を見ると、インスンがスンハの方を見て手を振って帰って行った。
良かった、アッパに見つからなかった。
スンハもインスンの方に向かって笑顔で手を振り返した。
机の上のランプが光った。
調べ物に集中している時にインタ-フォンが鳴ると集中力が途切れるからと、スンジョの部屋の呼び出しはランプが点灯するようになっている。
「はーい、アッパでしょ?開いているよ。」
スンハはサッと部屋の中に芳香スプレーを二度プッシュした。
「どうして芳香スプレーを噴出するんだ?」
「ん~~今ね、掃除機を掛けていたから、ちょっと埃っぽくて。」
誰に似たのか、顔色を変えないで話す事は割と上手い。
「クリスマス・・・・帰って来なかったな。」
「友達と一緒にいたから。」
「友達?」
「ほら、幼稚園から一緒のユアとジュナ・・・・・ジュナが結婚するんだって。」
「フ~ン。」
二人には事前にアリバイ工作を頼んでいた。
勿論、ジュナの結婚は本当でユアも親に内緒で彼氏とクリスマスの旅行をスンハと行く事にしてある。
「スンハは医学部を卒業するまではないからな。」
バレタ?
「判っているけど、アッパ達は学生結婚だったじゃない。高校から一緒に住んでいたし・・・・」
「事情があって一緒に住んでいたんだ、結婚だっておばあちゃんが勝手に決めた事でアッパはオンマが卒業してから結婚するつもりだった。」
スンハは平気な顔をして話してはいるが、インスンがいた形跡が見つからない様にと内心はドキドキだった。
「授業は何時からだ?送って行こうか?」
「ホント?助かった!ついでに朝食も御馳走して!」
無邪気に抱きついてくるスンハにスンジョの顔がほころんだ。
だけど、なぜかスンハが以前とはどこか違うような気がしていた。
「そういえば・・・・・・さっき管理人が言っていたけど、このマンションの一人暮らしの女子学生の部屋に男性が入り浸っているらしい。スンハは心配ないと思うけど、人は・・・特に男は入れるんじゃないぞ。この部屋には大切な書類もあるんだから。」
「判ってるって!ご飯食べたいから早く行こうよ。」
インスンが泊まった形跡も見つからず、スンハはスンジョの腕にしがみ付くようにして部屋を出て行った。
見つからなくて幸いだった。
バスルームに残ったインスンの着替えの入っている鞄がポツンと置かれていた。
スンハもそこに、インスンの着替えの入ったかばんが置かれている事は知らなかった。
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