小さなライバル達(スンハ) 129
インスンは、スンハが間違いなく妊娠していると確信して待っていた。
ただ教授にどう話を切り出したらいいのか、どんな顔で会ったらいいのかと迷っていた。
計画的妊娠には反対だったが、スンハが自分の提案に反対したらわかれると言われて思わず了解してしまった。
「私ね、インスンしか好きになれないの。初恋はアッパだしアッパ以外考えられなかった。だって、アッパって恩間をとても愛しているし、子供の私から見ても頼りになる男だと思うの。同年代の男子は私が<パランのペク・スンジョの娘>と知ると尻込みしちゃうし、知らなくても知った途端に逃げ出しちゃうでしょ?告白もされた事がなければ付き合った人もいない。最初のキスは・・・・・・・高校の卒業式の後にインスンに告白して、受けてくれた時のキスよ。その時に、もう私にはこの人しかいないって思ったら・・・・・・」
どうしたらいいのだろうか。
前からずっとスンハの事が好きだったから、卒業式の時に告白されて付き合い始めたけど、妊娠してしまったらこのままではいけない。
まだ学生なのに・・・・・・・・
教授に睨まれたら留学も途中で切られるだろうし、跡取りの自分の無責任な行動に、両親にもどう話していいのか・・・・
いや、一番怖いのは両親もだけど・・・・・・
「インスン、今日が一番確率が高いの・・・・今日よ!」
それが連休に戻ったあの日だった。
また暫く会えないのと、今までは大丈夫だったから一度で確実に妊娠しないかもしれないと力説しているスンハの勢いに乗ったのがバカだった。
医師になる男なのに、情けない気持ちだ。
___ガチャ・・・・
スンハは診察室から出て来た時に、考え込んでいる様子だった。
「スンハ・・・・・違ってたか?」
目に涙を浮かべているスンハを見た時、スンハには申し訳ないが妊娠していなかったと思って、オレはかなりホッとして気持ちが軽くなった。
「一度で出来るはずないさ、まだ学生なんだし結婚してから・・・・・」
「・・・・・・ちゃった・・・・・・・」
「えっ?」
「出来ちゃった・・・・・・・・」
「そりゃぁ・・・そのつもりでし・・・・出来てた?」
「どうしよう・・・・インスン・・・・・・・」
そのつもりで乗ったグミの提案だったが、急に泣き出したスンハに他の患者は訝しんで二人を見ていた。
「う・・・・産まれるのが楽しみだなあ・・・・・・・・」
ぎこちない言い方に、他の患者に不審に思われないようにインスンは装った。
「本当?本当にそう思う?」
「当たり前だよ、会計して家に帰ろうか。これからいろいろな人に報告をしないといけないから。」
そう言ってみたが、頭の中はペク教授の冷たい視線が多方向から見られているような気がして背筋が凍りそうだった。
スンハと付き合って4年。
お互い将来の相手と思い、大人な付き合いを始めたのはスンハが大学に入ってから。
間違いが起こらないように、二人で気を付けていたが、スンハの強引ともいえる今回の提案。
インスンの足は、アクセルを踏んでいても感覚が無かった。
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