小さなライバル達(スンハ)番外編2

スンジョの誕生日に思い出のレストランで食事をしていると、愛娘のスンハが一人の青年を連れて現れた。

彼の名はファン・インスン。パラン大学医学部の4年

スンジョは、あっけらかんと話すスンハに顔色が変わった。

小さい頃はハニによく似ていたのでスンジョはとても可愛がり甘やかしたのが間違いだったと思っていた。

自由気ままで自分が思った通りに行動をする今では、まるで<グミママ二世>と弟達に言われていた。

スンハが連れて来た青年ファン・インスンが、緊張しながらスンジョの正面に座ると、今にも切れそうな危ない表情になっていた。

未だに場の空気が読めないハニが、孫が産まれる事を知り喜びはしゃいでいた。

どうやら、その青年と面識の無かったのはスンジョただ一人だった。

スンハの兄弟達からおばあちゃんも、ククスのおじいちゃんも面識があったのだ。

「ハニ・・・・帰るぞ。」

そう言ったきり無言になり、ハニの手を痛いほど握ってサッサと会計を済ませレストランを出て行った。

家に帰ってからは、ハニにも何もしゃべらずにいつもよりお酒の量が多い。

ヤケ酒や酒で気を紛らわせることなど一度もない。

家の片づけを終わって玄関の鍵を掛けた時、小学校6年になるスンミがスンジョの世話をやいていた。

「アッパ、こんな所で眠ったらだめだよ。起きて・・・・・」

珍しく酔いつぶれたスンジョを、細い腕で一生懸命に揺り起こしていた。

身体が弱くて同年齢の子供よりも細いスンミは、頭が良くて美人でスポーツも万能の眉目秀麗の姉のスンハに憧れていた。

「オンマ、アッパはどうしたの?スンミが起こしても起きないよ。」

ハニは昼間、スンハが恋人を連れて来てから元気がなくイライラしているスンジョを見てため息を吐いた。

「今日ね、アッパにショックな事があったのよ。スンミは部屋に行って眠りなさいね。オンマが後からアッパを寝かせるから。」

ハニたちには、スンハの下に子供が四人いた。

以前は二階の部屋だけを使っていたが、ウンジョ夫妻は三階に、グミは増築した離れの一階でギドンは二階に住んでいた。

ハニ達はゲストルームの一つをスンジョの書斎とし、寝室はスチャンとグミの使っていた部屋に変わっていた。

「スン・・旦那様・・・・・起きて。こんな所で眠らないでよ。また・・ブランデーを全部飲んだのね。これって・・・おばあちゃんの大切なブランデーじゃないの。ねえ・・・起きてよ。」

ハニは約束を守って、今日はスンジョの事を<旦那様>と抵抗があるもののそう呼びながら、スンジョを一生懸命起こしていた。

身長の高いスンジョが眠ってしまうと、小柄なハニには酔ったスンジョを寝室まで連れて行く事が出来ない。

「ハニ・・・・」

何度も身体を揺すると、スンジョは熟睡つむっていた眼を開けた。

スンジョがうつろな目でハニを見つめた。

「ハニのお義父さんも、こんな気持ちだったのかな・・・・・大切に育てた娘が結婚するって知った時、大切に守って来た宝物を取られたような。」

スンジョは空になったグラスを見ながら深いため息を吐いた。

「アッパのマンションで、一人暮らしをするって言った時に反対すればよかったな。」

ハニは目を覚ましたスンジョに遠い昔の事を思い出しながら話した。

「旦那様は理性が働いて私に指一本触れなかったし、それどころか私に随分冷たかったわよね。でも、優しいのよ彼・・・・・・スンハがコーヒーを飲もうとすると先に取ってあげたり、車に乗り込む時はドアを開けたり・・・・・羨ましかったわ。何度か家に遊びに来てくれたの。スンハの彼ファン・インスンは旦那様が出張の時に挨拶に来たのよ、結婚したいって。でもね、こういう事は、父親にも知らせないといけないって言ってあげたの。スンハにアッパの誕生日の日は家にいるわよって・・・・・レストランの名前と場所は、私達が家を出る時にメールして知らせたのよ。」

「ファン・インスン?オレだけが知らなかったのか?」

「スンハはアッパに怒られるような気がしていない時に連れて来たいって言っていたの。おばあちゃんも、一目見てインスンを気に入ったの。」

スンジョは、自分だけがスンハの恋人の存在を知らなかった事が気に入らなかった。

酔いが覚めて風呂から上がりハ二を待っているスンジョは、ソファーに腰掛けてもずっと考え込んでいた。

ドレッサースツールに座ったハニはドライヤーで乾かした髪をブラッシングしながら、鏡に映るスンジョに話しかけた。

「ねえ・・・・スンジョ君・・・・スンハアッパ・・認めてあげない?お腹が目立つようになったら困るでしょ?今なら、ウエディングドレス選びも困らないし。自分だけが知らなかったから気にしているの?」

「ああ・・・いきなり結婚したいと言われただけでもショックなのに、孫が産まれると聞いたら父親というのは大切に見守って来てもこんなに淋しいいものか・・・と思う。でも、ハニが言うとおり二人を認めないといけないな。子供が一人、親という巣から旅立つのだから。お袋が旅行から帰ったら、どこかホテルの部屋でも取ってみんなで食事でもしよう。お袋もひ孫が産まれると思うとまた頑張るだろうから。」

時々もれ聞こえる、スンジョとハニの話し声に

静かなペク家の二階の子供部屋のドアが閉まった。

「いいかみんなよく聞けよ。僕達にまた兄妹が出来るかもしれない。」

「そうなの?お兄ちゃん・・・・・どうして分かるの?」

「お兄ちゃんには分かるんだぞスンミ。前におばあちゃんとお姉ちゃんが言ってたんだ。」

「何を言ったのおばあちゃん達。」

「スンスク、お前は5年生になったから、お兄ちゃんの言う事を静かに聞け。」

三人の弟と妹はうんうんと頷いて、ジッとスンリを見ていた。

「アッパがオンマと一緒に僕達が眠る時間にアッパたちの寝室に入ったら、兄弟が出来るらしい。」

「僕、お兄ちゃんになるの?」

「ああそうだ、スンギも一番下って言われなくなるぞ。」

「やったー!!」

4歳のスンギはハニそっくりの顔と心と頭を持っているペク家のアイドルだった。

そんな、子供部屋の子供だけの会議でなにやら企んでいる事は、寝室で甘い甘い時間を過ごしているスンジョとハニには解らなかった。

「スンジョ君・・・・・まだ・・・・酔ってるの?」

「もう・・・酔ってない。ハニが・・甘い声でと呼ぶから、理性が崩れたんだ・・・・オレの誕生日・・・・・なんでも聞くんだろ?・・明日は・・・病院も・・・・・学校も・・ない・・・朝までは・・・いつかスンリたちも・・・・・・この家から出てオレ達・・・・・二人・・・か・・・な・・・・・・・」

二人で祝ったスンジョの誕生日の夜は、激しくて甘い夜になった・・・・・

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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