小さなライバル達(スンハ)番外編5
スンジョは、困惑していた。
いやスンジョだけじゃなくハニも同じだった。
娘スンハが、突然の結婚宣言。
スンジョ達も突然の結婚だったが、それでもスンハはオマケ付きの結婚。
あんなに可愛がり自分を慕っていた娘が、父親のスンジョにだけ付き合っていた相手を紹介していなかった。
父親として淋しい思いをしていた時、ハニにまさかの妊娠発覚。
さすがに孫と子供が同じ年になるとは・・・
ハニも、自分の看護師として後輩に指導する立場になり、予定外の妊娠に困惑した。
グミはハニの妊娠に相変わらず大喜びだか、弟のウンジョ夫妻は呆れていた。
「兄貴も、年齢を考えろよ。」
そうは言っても兄夫婦は共に四十代。
同級生でも、まだ子供が小さい人もいた。
今日のスンジョは勤務だから、産婦人科にはハニ一人で検査に行く事になった。
勤務日と言っても、スンジョは特別な患者や授業が無ければ自由が効く立場になっていたから一緒に行くつもりだった。
「スンジョ君が、行くと目立つから。」
ハニが付いて行こうとするスンジョを止めた。
腕時計を見た。
そろそろ診察が終わり、ハニから連絡があるはずだ。
ジッと携帯を開いて待っていると、ハニからの着信があった。
「もしもし?ハニ?」
一瞬の間がありハニが話し始めた。
<2ヶ月だって・・・・・・・それに・・・・・・>
「それに?何かあったのか?」
<た・・・・・・多胎児・・・・・・・・・・>
「双子?双子なら別に今時何も珍しくも無いじゃないか?」
電話の向こうのハニは何か言いにくそうにしている。
<どうしよう・・・・・・スンジョ君・・・・・・・・双子なんて・・・・・・>
そう、双子ならハニも高齢出産という事だけで気にしなかったが、かなり落ち込んだような言い方に心配になって来た。
スンジョは、電話を切り部屋を出て産科外来に急いで向かった。
産科外来受付前のソファーに考え込むようにハニが座っていた。
自分に近づく足音の方に、顔を向けるとスンジョが心配そうに駆け寄ってきた。
「スンジョ君・・・双子なんて・・・・どうしよう・・・・・・・・」
「ハニ・・・・・・・・・・」
スンジョもハニから双子と聞いた時に驚いた。
不安そうなハニの肩を抱き寄せて、ハニの髪にそっとキスをした。
それ以上にハニが戸惑っているのが誰の目にも判るほどだったが、スンジョが来た事でハニは少し落ち着いて来た。
「高齢出産になる事が恥ずかしいのに、孫と自分の子供が同級生になると思うと恥ずかしいのに・・・・それも双子・・・・私に育てられるだろうか・・・・それに、その上にまだスンハ以外に四人の子供がいる。ただでさえ、不器用な私に・・・・」
「・・・・・大丈夫さ・・スンリだって高校生だし、末っ子のスンギだってこの子たちが産まれる頃には5歳になる。五人の子供たちを無事にここまで育てたんだから、ハニとオレと協力すれば大丈夫だ。それに、お袋があれだけ元気なんだ、双子が産まれるとまた張り切るだろう。ハニが子供を産むたびにいつも張り切っていたじゃないか。」
ハニはいつでもスンジョが大丈夫と言えば大丈夫のような気がしていた。
折角芽生えた命。
嫁ぐ娘と一緒に孫と自分の子供の子育てをしたっていいじゃないか。
スンジョはそう思っていた。
スンジョの頭の中には、あたふたするハニと張り切って動いているグミ、弟や妹に指図してふんぞり返っているスンハの様子が脳裏に浮かび思わず笑みがこぼれた。
ハニと二人だけの生活がもう少し先に延びた事に多少ガッカリもしたが、いつの間にかハニより自分の方がパートナーに対して独占欲が強くなっている事がおかしくて、片方の口角を上げてクスッと笑った。
暫くは子育てで忙しく落ち着かないが、結婚してから今日まで一日も二人きりで静かに暮らした事がなかったが、いつかはハニと静かに過ごせる日が来るのだろうか?
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