小さなライバル達(スンハ)番外編 最終話
「スンジョ君・・・・・・」
「あぁ・・・スンハの顔色が悪いな。」
少し前からスンハの顔色が良くなく、時々痛みをこらえている様に見えた。
「違う・・・・私も・・・・・・」
ハニがスンジョの袖を引いた。
「さっきからどうも可笑しいの・・・・・・・スンジョ君・・・・・パク先生を呼んで。」
スンジョがハニの方を向くと、額に汗を掻いていた。
「何分間隔だ?」
「15分間隔・・・・・・・」
スンジョはハニの背中を擦って立ち上がった。
それに気づいたのか、グミがスンジョとハニの方を見た。
グミも壇上のスンハを気にしながら、背をかがめてスンジョたちの方に近づいた。
「どうしたの?」
「パク先生に、スンハの陣痛とハニの陣痛が始まったと伝えてくれるか?オレはハニを連れて退席して病院に行くから、インスンに後は披露宴に来ている人に説明をするように言ってくれ。スンリ・スンミ・スンスク・スンギを頼んだ。」
「判ったわ・・・・・・・・ハニちゃん、頑張ってね。」
頷くハニは、言葉が出なかった。
ロビーを通り車寄せに行くと、スンジョの馴染みの運転手がドアを開けて二人を乗せた。
「急いで、病院の救急搬入口まで。」
運転手もバックミラー越しに目で合図をして、車を直ぐに発進させた。
途中、救急車がサイレンを鳴らしてスンハの結婚式が執り行われている方に向かって走って行くのとすれ違った。
スンジョとハニの乗った車が救急搬入口到着すると、向かう車中から事情を連絡しておいた為、車イスがすでに用意され産科の看護師や医師たちが待機していた。
車イスに乗るのと続けて、けたたましいサイレンの音が聞こえて来た。
スンハ達だ。
後ろのハッチが開き、最初にインスンが降りてスンハの手を取った。
急いで着替えたスンハと、着替えずに付いて来たインスンは、初めての出産で不安な顔をしていた。
「アッパ・・・・オンマ・・・・まだ早いんだけど・・・・」
「オンマもね・・・・・もしかしたら、同じ日に産まれるかも。」
それが二人が出産前最後に交わした言葉だった。
スンハは分娩室に、ハニは違う階にある手術室に入って行った。
それから1時間後、待ち望んでいた双子とスンハの子供がほとんど同時に産まれた。
「スンジョおじいちゃんとインスンアッパ、おめでとう。」
グミにお祝いを言われて照れているインスンに対してスンジョは戸惑っていた。
まだ40代で、初孫と自分の双子の誕生で複雑な思いだった。
「スンジョ・・・私だって40代で初孫のスンハと対面したのだから、そんな顔をしていたらダメじゃないの。」
「そんなに不機嫌な顔をしているか?」
その場にいたハニ・スンハ・グミ・ギドンは頷いていた。
「でも、スンジョ君良かったよね。私たちの双子は手術によって産まれたから、ほんの少しだけスンハの子供より年が上よ。」
「ああ・・・・そうだな。僅か2分だけどな。」
スンハも出産の疲れもなく、意外と元気な様子でグミⅡ世の言葉をスンジョに向けて言った。
「アッパの事をなんて言おうかな?おじいちゃん・・・・・かな?オンマはなんて言えばいい?おばあちゃんだとグミおばあちゃんもまだ若いし・・・・・・・」
「勝手にしろ!」
相変わらず素直になれない時があるのか、スンジョはハニのそばの椅子に腰掛けた。
そんな時、遠慮しながらスンハの夫インスンが
「今のままでいいんじゃないかな?僕たちはまだ若いし、お義父さんもお義母さんも若いんだから。言葉を覚える頃になったら考えればいいさ。」
廊下をパタパタと幾つかの小さな足音が聞こえて来た。
「オンマァ~!アッパァ~!お姉ちゃん、赤ちゃん見て来たよ。」
一番小さなスンギが嬉しそうに病室のドアを開けた。
スンミが見て来た弟と妹と姉の子供で甥の名前を思い出すように言った。
「私達の小さな弟がスングで妹がスア、そしてお姉ちゃんの赤ちゃんがインハ・・・だよね。」
賑やかな病室の中、ハニがペク家に来てからスチャンが持病の悪化で他界したが、ウンジョたちも結婚し子供が産まれて家族が増えた事に、グミだけではなくスンジョも幸せ溢れるこの生活がいつまでも続く事を願った。
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