スンリのイタズラなKiss 1
母はパラン大附属病院の看護師オ・ハニ。
姉はパラン大附属病院の産科の医師のペク・スンハ、その夫で同じくパラン大付属の外科医のファン・インスンは現在海外の病院に研修に行っている。
オレは、パラン大医学部の四年。
いわゆる家族が医療関係のエリート。
自慢になるが、おじは大手玩具メーカーハンダイの若き社長、ペク・ウンジョ。
そんな紹介などどうでもいい。
今オレは一人の女に、ムカついている。
「オレ達はこれで終わりだな。」
「そうね、じゃぁ貴方はこの極寒の海を泳いで帰ってね。」
「フン!そんな気が強くて思い込みの激しい女は嫁の貰い手がないぞ、ワン・ソラ。」
人がいても全く気にしないで大きな声で言い争っているのを、空港を行き来している人たちは振り返りながら通り過ぎていた。
「気が強いのは母親譲りだから仕方がないでしょう?それに私と付き合いたい人は山ほどいるんだから。」
「なら、よかったな。オレは優しくて大人しい女を探すから。」
「どうぞ、あなたみたいな冷徹男はこっちから願い下げよ!」
スンリとソラが出逢ったのは今から4年前の大学受験の直前に、スンリのおじの会社の周年パーティの会場だった。
スンリとソラは、お互いの両親が知り合いだと判って紹介された。
どんな知り合いなのかを父に聞いても、珍しく顔色を変えて母の様子を見ているその姿に、スンリは聞いてはいけない事を知った。
ここ済州島への旅行は親の内緒で大学を卒業するソラにお祝いを兼ねてやって来た。
それなのに、二人は些細な事で喧嘩をしてしまった。
来る途中の飛行機に乗った時、CAと親しげにスンリが話をしているのを見てソラが怒ったのだった。
CAは、スンリの高校の先輩でスンリに片想いをしていたと言っていた。
それをソラが勝手に怒ったのが原因だった。
「チェックインです。」
「お名前は?」
「ペク・スンリ」
「お二人様ですね?ワン・ソラさんと。」
「部屋は別にしてください。」
「一緒で構いません。」
ソラの声にスンリは振り返った。
「なんだよ、他のホテルに行くんじゃなかったのか?」
「スイートに一人じゃ寂しいでしょ?おば様から、くれぐれもスンリをお願いねって頼まれたから。おば様がスンリは父親似だから、一人にさせていると誰かに取られちゃうわよって言ってたの。」
「取られたっていいだろう?オレ達はさっき別れたんだから。」
素直になれないスンリとソラ。
お互いスンリは父に、ソラはソラの母親に性格が似ているから、譲らなくて何度も喧嘩をしては別れる別れないの繰り返しだった。
「ここって高いでしょ?どうしてここを選んだの?」
「親父たちの新婚旅行で泊まったホテルで、前に来てよかったからソラの卒業祝いに来たんだ。オレはまだ2年は学生だからな。」
本当の理由は違う。
両親がひた隠しに隠している、暗い過去が何なのかを知りたかった。
母さんはそれを聞くと涙を浮かべるし、親父は不機嫌になってお袋の顔色をうかがっている。
ソラと母さんは仲良くしているようだけど、母さんはソラとオレが話をしていたり、親父の傍でソラがいると悲しい顔をしていた。
母さんとソラのお母さんの間に何かあったのだろうか?
「ソラ・・・・君のお母さんとうちの両親とは、どこでの知り合いなんだ?知っているだろう?」
「スンリは知らなかったの?おじ様とうちのお母さんは昔婚約していたのよ。」
えっ?
「と言っていたけど、本当はよく知らないわ。」
そういえばチラッと話をしていたのを聞いた事があった。
オレがソラと付き合うと家で話した時に、両親の部屋から母さんの泣き声が聞こえて、親父が慰めていた。
母さんは婚約している親父を奪えるようなそんな人間ではないし、ソラの両親はそんな素振りも見せない。
「なぁ・・・・オレ達このまま付き合ってもいいのかなぁ・・・・・・」
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