スンリのイタズラなKiss 3
「まぁ、普通かな?」
テハン大の最後の試験科目が終わり、机の上の筆記具を片付けているスンリに、クラスメートが声を掛けた。
「普通かぁ・・・・・・オレはやばそうだ。」
「何とかなるだろ?今日が失敗でも、後期での試験で頑張れば。」
「いいよなぁ・・・お前は余裕で、センターでテハンが決まったのだろうから。」
「オレ、パランの医学部に推薦で決まったから、テハンは記念受験だ。」
「パランにそのまま行くのか?・・・・そうか、お前の両親もパランだっけ。」
「じゃっ!お先!」
いつまでも続くようなクラスメートの話を切り上げるように、スンリは試験会場となっていた教室を出て行った。
どこの教室も試験の出来を聞き合う学生たちの声が廊下にまで聞こえて来た。
「ハンダイのクリスマス・パーティで会ったペク・スンリ君?」
聞き覚えのある女の子の声に振り向くと、数日前におじの会社のパーティで父から紹介された知人の娘のワン・ソラだった。
「やっぱり!」
「何?」
愛想のないスンリの言葉にも表情も変えないワン・ソラ。
「母から聞いたとおりね。」
「何が?」
「あなたのお父様とよく似ているって。」
「ありがとう、とでも言っておくよ。それじゃぁ。」
長身で整った顔立ちのスンリと、スタイルが良く美人なソラが並んで立っていると、人々の視線が自然に向けられる。
そうでなくても、スンリに好意を持っている女の子は多い。
注目を浴びる事が嫌いで、女の子に興味のないスンリは長い脚でサッサと歩いて外に出て行った。
それでも、スンリにソラは追いついて来た。
「テハンに行くんでしょ?何学部?」
「オレがどこに行くのか、君には関係ないだろう?」
「関係あるの。」
冷たく突き放すような言い方のスンリと、めげずにここまで長く話を出来る女の子はいない。
この世でスンリと対等に話が出来る女性は、祖母のグミと母ハニ、それに姉のスンハだけ。
「なんで関係あるんだよ。」
「だって・・・・私、あなたに一目ぼれしたんだもの!」
「はっ!下らん。オレは女には興味はないんだ。」
「それじゃぁ、男になら興味があるの?あっ・・・・・・・・」
思ったよりも二人の声が大きかったのか、カップルの痴話げんかのように周囲に思われて、すれ違う人たちがひそひそと話をしているのを嫌がり、スンリはソラの手を引いて脇道に入った。
「一度会っただけで、オレのどこがいいんだよ。」
「あなたバカなの?一目ぼれって言ったでしょ。あなたと同じ大学で勉強をしたいの。」
祖母や母と姉以外に言い返す事が出来ない相手にスンリは初めて出会った。
「パランの医学部に推薦で決まった。」
「偶然ね、私もパランだけど、法学部志望なの。」
いつまでもソラと話をしたくもないと思っているスンリは、ソラの横をすり抜けようとした時、不意に腕を引っ張られてソラの唇で口をふさがれた。
「これで私の事は忘れられないでしょ?」
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