スンリのイタズラなKiss 18
9「もう、スンリったら何のための携帯よ!昨日の夜も今朝も電源を切って。ワン・ソラがこんなに汗を掻いて走って学校に行かせたのはあんたペク・スンリだけなのよ。」
父が会社行く車で一緒に行こうと誘ってくれたのを、朝からこんなに汗を掻くのなら受ければよかったとソラは思っていた。
言われた時は、父の魂胆は愛娘に付きまとっている虫けらを振り払う、という事だと分かっていた。
スンリはソラが初めて好きになった人だが、今までソラに付きまとっていた男の子たちを、父がラケットを一振りして追い払っていたのだった。
いくら自分から告白したのではなくても、父ギョンスは娘の周囲にいる男の子たちを追い払うのを、最愛の妻に見せるためのパフォーマンスとソラは思っていた。
「うちのパパとママは全くお似合いでもないのに、どうして結婚したのかしら。パパは普段は豆腐みたいにシャキッとしないのに、ラケットを持つと豹変する変人じゃない。スンリのお父様が羨ましいわ。」
朝の出勤登校で満員のバスから降りてソラは辺りを見回した。
一台前のバスで来たスンリの後姿を確認すると、また全速力で走った。
「おはよう、スンリ!」
スンリの広い背中に抱きついて、熱烈な朝の挨拶をした。
「おい!朝から人前で抱き付くな!」
「朝じゃなければいいの?」
一旦は立ち止まってソラの方を向いたが、歩いている人の視線を気にしてスンリはまた歩き出した。
「怒ったの?」
「当たり前だ。お前と違ってオレはパラン大に歩いて行きたいからな。」
ソラは小走りに追いついて、スンリの腕に自分の腕をからませた。
「テニス部の新歓があるんだけどスンリは行くでしょ?」
「行かない。」
行かないとは言う事は判っていたけど、はっきりと口に出されると残念に思った。
「スンリは彼女の私が、先輩たちに飲まされて何をされてもいいんだ・・・・・」
飲まされて何をされてもいいって?脅しか?
「飲まなきゃいいだろう。」
「先輩の言う事は絶対だもの、お酒をも嫌でも飲まないといけなかったらどうする?スンリは私が先輩方にいいようにされてもなんとも思わないんだ。これでも私って、モテルのよ。」
ベラベラと喋っていたソラの言葉に、スンリのこめかみはビクッと動いた。
「判ったよ、行ってやるよ。」
ソラは心の中で、叫んだ。
“やったぁー!私の脅しの演技は、わが父も騙されるんだから。伝統あるテニス部の先輩はマナーも完ぺきよ”。
ソラは強引に新歓にスンリを行かせる事が出来て、スンリの弱点をまた一つ増やした。
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