スンリのイタズラなKiss 19
新歓の開始時間までまだ一時間もある。
どこかで時間を潰して指定されている店に行けばいいが、スンリは新歓に行く気がしない。
ソラに半ば脅しのような言われ方で「行く」と言ったものの、大体自分が行くと父の話や姉スンハの話が出ることは判っている。
帰ってしまおうかと思ってはいるが、ソラが他の男子部員たちと談笑している光景を思い浮かべると、イライラとした気分になった。
「ラウンジで本でも読んでいるか。」
昨日の夜から電源を切ったままの携帯をカバンから取り出した。
携帯を父と母から受け取り、その初日に双子の弟のスングと妹のスアそれに甥のインハを保育園に迎えに行かされ、新調したスーツがよれよれ状態で帰宅した事はスンリにとって屈辱的だった。
別に三人の事は嫌いではないが、小学生の時に兄弟が多い事をからかわれてから、家族の話をする事があまり好きではなかった。
「ねえ・・・医学部の一年にペク教授の息子さんが入ったのよね。」
背の高い観葉植物の影で、話し始めた学生からは見えない。
スンジョは素知らぬ顔で本を読みながら、その会話を聞く事にした。
「六年のペク・スンハもそうだけど、あの家系っておばあちゃんからずっと結婚が早いのよね。」
「そうそう・・・彼の両親も21歳で結婚して、7人の子供でしょ?」
「いまどきすごいわよね。」
人の家庭の事を話して何が楽しいんだ。
何歳で結婚しようと、誰かに迷惑をかけているわけではないからどうでもいいだろう。
「でさ・・・・彼も早い結婚をするのかしらね。」
「かもね。彼かっこいいし、お金持ちなうえに、将来は教授のようにパラン大の教授になるのかしら。」
「いいわよねぇ・・・・告白っしちゃおうっかしら。」
その次の言葉でスンリの我慢の糸が完全に切れた。
「でも、彼のお母さんってバカなんですって。」
「実習に行った先輩からの情報だけど、看護師歴15年以上経っているのに、いまだに点滴や注射ヘタで看護師長に怒鳴られているんですって。」
「バカなお姑さんを持つと、お嫁さんになろうとは思わないわよね。」
母大好きスンリにとって、家族をバカにされては面白くない。
おまけにありもしない事を得意げに話している医学生を殴りつけたいほどだった。
「君たち・・・・どこの学部?」
「医学部一年・・・・・・・の・・・・え・・・・・」
二人が振り向くと、睨みつけているスンリが自分たちの方に向かって歩いている姿を見た。
その顔は、心臓が止まるほど怖かった。
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