スンリのイタズラなKiss 20
ジワリジワリと、二人の医学部生の方に近づくスンリの突き刺すような目におびえながら二人は椅子から立ち上がった。
「オレのお袋がなんだって?バカなお姑さんを持つと、お嫁さんになろうとは思わない?」
「あ・・・あの・・・それは・・・・・」
「お前たちに、お袋の良さは判らないだろう。他人が無理だと言っても、自分が決めた目標をただひたすら必死に突き進む。子供に対しては、親だと言って押さえつけるのではなく、子供の立場になって子供と共に成長する。そんなオレのお袋に会った事も無いのに、お嫁さんにはなりたくないだって?」
簡単に言えばお袋は40過ぎても、子供みたいに純真で人を羨む事を知らないだけだ。
そんなお袋をバカだと言う人がいる事は知っている。
オレの親父が選んだ人だ。
誰にとっても母親は世界一の母親なのに、会いもしないコイツ等に悪く言われるのは腹が立つ。
「どのみち、お前は我が家の嫁にはならないから。それじゃ・・・・・新歓楽しんで来いよ。」
スンリはそのままその二人のそばを通り過ぎた。
あの二人はテニス部に入った二人だ。
先日の顔合わせに端の方で大人しく座っていた。
医学を志している学生が、医療現場で永い年数働いている看護師の噂をするなんて最低だ。
まっ、お袋に関しては年数だけは永くて、本当にまだ注射は苦手だと本人が言っていたから、怒る事ではないけど、必死にうまく打とうとしているあの顔を見ると、打たれる側も我慢して長ぁ~い目で見守ろうと思うさ。
それにお袋はあんなんでも、患者には人気があるんだぞ。
「お待たせ!」
イライラした気持ちになった時にソラの明るい声を聞くと、不思議とイライラ感が無くなって来る。
「待ちすぎて、頭に来たよ。」
ソラは携帯の待ち受けを見て時間を確認した。
「まだ新歓の集合まで余裕だよ。」
「時間じゃないよ。ソラを待っている時間に嫌な事を言われたんだよ。」
「何を?何を言われたの?」
何でもないと言っても、ソラはしつこく聞いてくる。
今まではお袋以外の人とは誰とも腕なんて組んだ事はなかったが、ソラと会ってからソラが何もオレの気持ちも考えないで組んでくる細い腕を待っている自分がいる事に、いつ気が付いたのだろうか。
オレに話す時に横に並んでいても、オレの方を向いて話してくる。
その時に揺れる髪から漂う香りに胸がドキドキとする。
「ねぇ・・さっき私の名前を呼んだよね。」
「そうか?」
「っふふ・・・・いつもはお前って言っていたのに、ソラって呼んでくれた。」
最近気が付いた。
ソラはお袋に似ている。
新歓の会場の店に着き、スタッフに案内された部屋のドアを開けると、もう何人かが到着していた。
ラウンジで会った、ムカついた二人がオレの顔を見て視線を逸らした。
オレがテニス部だとは知ら無かったのだから仕方がない。
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