スンリのイタズラなKiss 31
「ママ、パパの具合はどう?」
溺愛しているソラに彼氏が出来たショックで、小さな子供みたいに大きな声を上げて泣き、そのうちに疲れ果てて眠った情けない父親をソラは心配していた。
「ダメ・・・・・昨夜は何度もなだめてみたのだけど、泣き止ま無くて・・・・・・今日は仕事まで休むらしいわ。」
情けない父親かも知れないが、自分の娘だからソラを溺愛している事はヘラにも判っていた。
「パパに挨拶してから学校に行くね。」
ソラは父たちの寝室のドアを静かに開けた。
「パパ・・・・・パパ・・・・・・起きている?」
部屋を開けて声を掛けても、返事をしない父の様子が心配になり近づいた。
背中を向けて眠っている父の正面に廻り、ソラは父の鼻を突いて顔を見た。
「パパ・・・・私だって年頃の女の子だよ。好きな男の子が出来るのが普通なの。今までは大おじい様の会社の所為で、誰も私と対等に話をしてくれる人がいなかったのは知っているよね。好きでオリエントコーポレーション一族として産まれた訳じゃないのに、オリエントコーポレーションの名前は強すぎて・・・・・友達だってあまりいなかった。」
瞼が動いているから起きてソラの話を聞いているのが分かる
「パパとママの知り合いの人の子供や、テニスを通しての友達くらいで・・・・・・でもね、彼はこの私に怒鳴ったり、話しかけても無視するわ・・・・・・でもね、新歓で他の男子部員に絡まれると助けてくれる・・・・普通の優しい男の子なの。それに彼の家族も普通の女の子として遊びに行った時に迎えてくれたの。今度彼を紹介するけど、きっとパパもいい男の子だと思うから会ってね・・・・・・じゃあ・・・学校に行って来ます。」
起きている事は分かっていても、何も言わず静かにドアを閉めて学校に向かった。
情けない父親に呆れながらも、ソラは前方を歩いているスンリを見つけると駆けだした。
「スンリ!待って!」
「はぁ?」
気の抜けた声で振り向いたスンリに、ソラは笑い出した。
「何よ・・・・その顔。まるで一睡も眠れなかったみたいに。」
「眠れなかったよ。また実家泊まりになった姉さんが来て、おばあちゃんからソラの話を聞いて・・・一晩中からかわれたよ。マザコンスンリって・・・・・本当にお前が来るとオレん家は大騒ぎになる。」
ソラは頭の中で、スンリの祖母のグミと姉のスンハにスンリが何度もからかわれている様子を想像していた。
「うちは、パパが一晩中泣いていたの。私に彼氏が出来たって・・・・・」
「彼氏って・・・・・オレの事?」
「そうよ、今度うちの両親に会ってくれる?」
「面倒くさいし、まだ束縛されたくない。」
「どうして?」
「一人になりたい時もあるんだよ。オレん家は大家族で兄弟も多いから、一人でいられる大学が一番気が休まるんだよ。じゃっ!オレはこっちだから。」
朝から不機嫌なスンリは、サッサとソラの先を歩いて行った。
32
「よぉ!スンリ。」
「ソング・・・・・」
ソングはスンリが保育園に通っていた時からの幼馴染。
「新歓の帰り、ワン・ソラとどこに行ったんだよ。」
「どこって・・・・・・」
「見たぞ、二人で入って行くとこ・・・・・」
ソングの口を塞いで、椅子に腰かけさせた。
「お前、オレが酒に弱いのを知っているだろ?」
「知ってるけど・・・・・酒の力を借りたのか?」
「まさか・・・・・・吐いて、そのまま朝まで・・・・・・・寝たんだよ。」
ニヤッとソングは笑って何か言いたそうにしていた。
「期待させるようで悪いけど、眠り込んだんだよ意識を失って。それだけだ・・・後は放っておいてくれ。今日は機嫌が悪いんだ。」
スンリの期限が悪いのは、父と母の会話を聞いたからだった。
「スンジョ君、ソラの事を好きでしょ?」
「何を言っているんだよ。バカバカしい・・・。」
親父・・・・・ソラと会ったのはあのパーティが最初だよな。
ソラが好き?
親父はお袋一筋で、子どもが7人いる中年の男なのに、モテることは知っているけど・・・・・ソラが好き?
自分の娘より年の若いソラだぞ。
「バカバカしいって・・・・だって、ソラみたいな女の子がタイプじゃないの。」
「まだ***の時の事を持ち出すのか?何年前の事だよ。」
「そうよ・・・だって・・・私と結婚する前は***だったでしょ?私には意地悪ばかりしているのに、*ラには優しくて・・・・」
「だいたいお前は勝手な思い込みが強すぎるんだよ、難しいオペの後の夜勤で疲れているから少しはオレを休ませてくれよ。」
泣いているお袋を無視して、親父はサッサと布団に入っていた。
背中を向けて眠った親父の傍で、お袋はしゃがんでずっと泣いていた。
ソラがいた時は、多分顔に出さないようにしていたんだろう、ニコニコと・・・・笑ってはいなかったが、モテなしていた。
何?何か有ったのか?
ソラはあのパーティで初めて、親父のテニス部時代の先輩と友人の娘だと紹介された。
それにオレはまだ認めていないけど、一応ソラはオレの彼女だぞ。
今朝の親父とお袋はオレが知っている限りでは、初めてだぞ、夫婦喧嘩は。
バカップルみたいな両親で、天然記念物的な空気の読めないお袋を親父がいつも見守る姿は、オレも将来結婚したらあんな夫婦になりたといと思っていたけど、お袋が興奮して泣いて話しているのを、相手にするのもバカバカしいといったように見えた。
何か昔あったのかな?ソラの両親とオレの両親の間。
それでも、クリスマスのあのパーティではそうは見えなかった。
スンリは今朝見た両親の姿が頭から離れなかった。
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