スンリのイタズラなKiss 34
寝転んでバカな女たちの話を黙って聞いていれば、聞きたくもないのにお袋の悪口を散々に聞かされる。
オレのお袋と一度も会った事もないのに、ありもしない事や些細な事を曲げて言っている言葉に、いつの間にが二日酔いも治っていた。
「スンリ!ここにいたの?」
ソラがオレを見つけて駆け寄って来た。
バカな女どもは、オレがすぐ近くにいた事に気が付いて、慌てて立ち上がって逃げようとしていた。
「おい、待てよ。」
スンリは一言言わないと気が済まなかった。
「オレのお袋に会った事があるのか?」
「あの・・・私たちは・・・・・・人から聞いただけで・・・・・・」
「誰だったかな?オレの親父と同級生の親がいるって言ったのは。」
だいたい誰が言ったのか判る。
骨格と体型で、スンリは声の感じを判断できる。
「私のママはペク先生と同じクラス・・・・・」
「同じクラスでも親父と直接話をした事はないだろう。」
家で見る親父は、オレ達子供よりもお袋を心配している。
人一倍ドジで失敗ばかりするのに、やり遂げようと必死になっているから、時には頑張りすぎてダウンしてしまう事もある。
「ごめんなさい・・・・・・」
何とかスンリから逃げたくて仕方がない女の子たちは、スンリを探しに来たソラの方に助けを求めていた。
「スンリ・・・・・怒らないでよ。私に免じてこの子たちを赦してあげない?通る人が見ているから、お姉さんやお父様にこの事が耳に入ったら、困るでしょ?」
ソラが女の子たちに、もういいから行きなさいと言うように合図をすると、両手でシートや飲食物を掴んで勢いよく逃げて行った。
「スンリはお母様の事が好きなのね。」
「お前は嫌いなのか?」
「そうじゃないけど、お母様の事でこんなに怒ったのをはじめて見るから。」
「まあな、お袋はオレの初恋だからな。」
「初恋?」
ソラは開いた口が塞がらないと言った顔をした。
「普通、親に恋なんてするの?」
「普通はしないだろうな。うちは特殊な家だからな。おばあちゃんは自分の子供の親父やおじさんよりも、お袋を実の娘だと思っているし、親父はお袋以外の女性には全く興味がないし、お袋は親父以外は好きになれないし、姉さんの初恋は親父なのに大学4年の時にサッサと結婚するし。お袋以外はオレの心を動かす事は出来ない。お袋は本当に何も出来ないけど一生懸命にやり遂げようとするお袋を見たら、ソラだってすごく好きになるさ。」
酔いがさめてそのままスンリは起きると思っていたが、また寝そべってそのまま静かな寝息が聞こえて来た。
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