スンリのイタズラなKiss 39
見せられた写真は誰が撮った物か分からないが、どこかのホテルで見合いをしているソラを見かけて隠し撮りした物だった。
まるで祖母みたいに隠れて上手に撮る人がいるものだと思うくらいに、偶然にこちらを見たソラのシャッターチャンス逃さなかったようだ。
もう何か月ソラを大学でも二人で行った場所でも見なかったのか。
いつも、どこからか現れては一人でしゃべっていたソラが、スンリが別れを告げてからは、どうして来ないのかと心配するくらいにスンリの前に現れなくなっていた。
幾分痩せた感じがするが、いつもスンリの前で笑っていたソラの顔とは違い、周囲に笑顔があるのに笑わなくなったソラ。
<ゴメン、ソラ。お袋が嫌な思い出があるのなら親父も同じだと思うと、ソラの両親と何が有ったのか聞く勇気がオレにはない。財閥令嬢のお前と医師で医学部教授の息子のオレとは合わない。ソラはあのオリエントコーポレーションを背負っている。それと同業の財閥の息子と結婚するのが一番いいんだよ。オレは、幼い頃から親父のような優秀な医師になると言う夢を実現したいから・・・・・・・・・>
「返すよ。」
「スンリ、お前ソラと付き合っていたのに、いいのかよ。」
「もう終わった言だよ、オレ約束があるから。」
外泊するのも、スンリには理由が有った。
ただ女の子の家に泊まり込んでいると両親も思っているのだとスンリは知っている。
親を裏切る事をする人間ではないが、ソラと別れて気持ちを紛らわせたいスンリは、このバイトを選んだのだ。
「スンリ、お願いね。これが着替えとミルクね。」
「判ったよ。早く帰って来てくれよ。」
スンリは親元を離れて、都会に出て来た女子学生の家の留守番のバイトをしていた。
今日は、学生でシングルマザーが夜間のバイトに出かけている間に、その子どもの見守りをする事だ。
スンリの子供の見守りは評判がよく、依頼するのに順番待ち。
年の離れた弟や妹がいて、スングやスアそれにインハを保育園に送迎する姿を見ていた学生がいた。
最初は気乗りせず受けなかったが、ソラと別れてから偶然スング達を迎えに行った時に話した、園長先生から頼まれて引き受けた。
家に帰れば、賑やかな中で落ち着いて本を読む事も出来ないから、バイトで子供を寝かし付けてから、朝方帰宅する依頼主が帰るまで本を静かに読む事が出来る時間が取れる。
だが、今日は本を読んでいても、頭に入って来なかった。
ソラの見合いをしている写真を見てから、心の中がモヤモヤとして落ち着かない。
携帯には、まだソラの番号は残したまま。
掛ければ掛けられるが、掛けてもソラとよりを戻す事は出来ない。
ソラの明るい大きな声が聞きたい。
携帯の画面を眺めていると、待っていた人からの電話だった。
<もしもし・・・・・・スンリ?>
「・・・・・・・・・・」
<会えないかな・・・・・・・会いたい・・・・・・・>
「今、家じゃないんだ・・・・・・・」
<どこ?>
「言えない・・・・・・・・・」
<女の人の部屋なの?>
「・・・・・・・・・・・」
<その女性(ひと)の事を好きなの?>
「お前だって、見合いをしただろ?」
<どうして知っているの?でもね・・・・・・断ったよ。ママがね、本当に好きな人と結婚しなさいって。会社絡みでお見合いをしても、私に好きな人がいたのなら、その人を忘れられないのなら断っていいって言ったから、断っちゃった。私・・・スンリとどうしても付き合っていきたいの。>
スンリはソラの言葉に、もやもやした気持ちが少し晴れてきた。
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