スンリのイタズラなKiss 41
ソラから会いたいと電話を貰ってから、子供の見守りというバイトの契約時間の終了までが長かった。
「特に熱が出たり、食欲も無かったり変わったところはなかった。」
「ありがとう、助かったわ。はい、バイト代。またお願いするわね。」
「夜のバイトをするよりも、相手の男に責任とってもらえよ。大学だって4年で出ないといけないんだろ?」
「判ってるんだけど、逃げた男を追いかけるなんて惨めな事はしたくないの。」
この依頼人とはスングとスアを保育園に迎えに行った時に知り合った。
田舎から出て来て、こっちで知り合った男と付き合っている時に子供を妊娠した。
親の反対を押し切って都会に出て来て、子どもが出来たから大学を辞めて田舎に帰るわけにもいかなかった。
「君って医学部だったよね。」
「ああ」
スングとスアとインハとその依頼人の子供はよく遊んでいたから、オレとも馴染みで気楽に話をよくした。
彼女が保育園に子供を迎えに行く時間が遅くなり、彼女の子供が熱を出した時にオレが迎えに来るまで面倒を見ていた事が縁で、見守りのバイトを頼まれた。
あの頃はソラと付き合っていた時期で、その依頼を受ける気にもならなかったから聞き流していた。
ソラと別れてからは家に帰ると、何時グミやスンハから根掘り葉掘り聞かれるだろうと思うと、帰りづらくて聞いていた連絡先に電話をした。
それからのバイトは正規で募集していたバイトではなく、個人的に頼まれてしていたバイトばかりだった。
恋人代行・家庭教師・深夜の場所取り代行・夜間の駐車場の管理人代行など多種多様。
依頼人の部屋を出て、外に出ると肌寒く感じた。
今からだとまだ時間がある。
家に帰ってシャワーを浴びて一時間くらい眠る時間がある。
家まではまだバスも地下鉄も走っていないから、自分の足で行かないといけない。
スンリはまるで気持ちが浮ついているのか、疲れて足が重くても意外と早く走る事が出来た。
家の門塀を静かに開けて、音を立てないように階段を上がり玄関のドアを開ける。
まだ、家族が寝入っている時間だから、静かに部屋に入り着替えを持ってバスルームに入った。
いつもはこの時間は眠くて軽くシャワーを浴びるが、今日は学校でソラに会う約束をしたからいつもよりシャンプーを丁寧にした。
「今帰って来たのか?」
バスルームを出ると、スンジョに声を掛けられた。
「ああ」
「少し話をしないか?」
父と面と向かって話をしたのはいつだっただろう。
父に付いて書斎に行くと母が淹れたのだろう、香りのいいコーヒーが湯気を挙げていた。
「コーヒーを飲むか?オンマがお前と飲むように淹れてくれたぞ。」
父に憧れて、ブラックでコーヒーを飲み始めたのは小学生の頃。
母と同じ甘いカフェオレをいつも飲んでいたが、姉スンハの結婚式での父の行動を見て父のように堂々とした心の大きな男になりたいと思った。
「外泊をして何をしているんだ?学校に行って成績もいいから許されると思うんじゃないぞ。まだ下に妹や弟がいる、兄として弟や妹たちのお手本になるようにしないといけないだろ。」
「もうしないよ。」
「ワン・ソラとの事で外泊していたのか?」
「それとは違うとは言えないけど、彼女とは一緒に過ごしていない。」
「そりゃあそうだろう。ソラの母親も父親もそれを許す人間じゃないからな。」
「おれ・・・・・・・ワン・ソラと一時だけど別れたんだ。でも、彼女の事が好きだからもう一度付き合う事にする。だから、お袋にも親父にもきちんと彼女を紹介するよ。たとえ、彼女の事を親父たちが知っていても、ずっと一緒にいたいから、親父たちの時間が空いている時に連れて来る。」
スンジョは、いつの間にか大人になった息子が嬉しかった。
自分がスンリの頃はハニへの気持ちに気づいていたのに、子供みたいにからかったり意地悪をしてハニを泣かせていた。
スンリとソラにはまだ越えなければいけないものもあるが、安心して息子の恋愛を見守って行こうと思った。
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