スンリのイタズラなKiss 46
ワン家の日曜日は、両親とも仕事をしていても家族そろっての休日を過ごしていた。
父ギョンスは月2で愛妻と休日のテニスを楽しんでいたが、今日は愛娘が会わせたい人がいるから家にいて欲しいと言っていたため在宅していた。
年頃の娘が親に会わせたい人がいると言う事がどういう事かは、鈍感な父でも判っている。
ギョンスは不安な気持ちを誤魔化すため、ラケットを持ってベランダに出て素振りをしていた。
ワン家の住むマンションは、政財界人など富裕層の人たちが住む高級マンション。
ベランダからゲートの向こうを見ると、ソラが背の高い青年と歩いて来るのが高層階にいるギョンスの目にに見えた。
正確には、普通の人なら見えても誰なのか判断が出来ないくらいに小さいが、ギョンスは愛妻ヘラや愛娘ソラだけはどんなに遠くても見分ける事が出来る。
「ヘ・・へ・・・へ・・・」
「何をへーへー言っているのよ。ラケットを置いて、少しは落ち着いたらどうなのよ。」
ベランダから出たり入ったり、口をパクパクしているギョンスは昔と変わらない。
「お・・・落ち着いているけど・・・・ソラは誰を連れて来るんだ?」
「将来有望な青年よ。」
立ったり座ったり、水を飲みにキッチンに行ったりと、まるで熊かゴリラの如く落ち着かない。
~ピン・・・ポ・ン
「き・・・き・・・来た・・・・・」
ヘラはソラとスンリを出迎える為に立ち上がり、ギョンスの隣を通り過ぎた。
通り過ぎる瞬間、ギョンスを落ち着かせるために背中を<バスッ>と力いっぱい叩いた。
「お帰りソラ・・・いらっしゃ・・・・スンリ、待っていたわよ。」
「お久しぶりです。僕の事を覚えてくれていたのですか?」
「覚えているわよ。仕事柄人の顔を覚えるのは得意よ。」
スンリはヘラの後ろに立っているギョンスに会釈をした。
「中に入って・・・・あなたの家みたいに一軒家じゃなくてマンションだから狭くて・・・・・」
「いえ・・・うちは家族が多く、まだ幼い兄妹がいますから五月蝿くて。」
スンリとソラの両親と会うは、クリスマス以来だ。
さすがにスンリはスンジョの血を受け継いでいるだけあって、ソラの交際相手として初めて訪れるワン家に緊張をしているようにも見えない。
4人の中で緊張しているのはギョンスのみ。
3人は普通に気兼ねせず話をしているのに、いつもワン家の中でソラに次いで賑やかなギョンスが、小さな声でポツンと呟いた。
「ペク家はオ家よりも遺伝子が濃いのか・・・・・・・・・・」
「何?何を言っているのよパパ・・・頭がおかしくなっちゃったの?」
「いやいや・・・・・・スンジョを見ているようで・・・・・・」
「よく人に言われます、父の若い頃にそっくりだと。性格も多少似ていますが・・・・体質は母ですかね・・・・・酒に弱くて、ソラに助けてもらった事があるんですよ。」
「ソラが助けた?」
ギョンスの目がキラリと光った。
「あ・・そ・・・その・・・パパ、お酒を先輩に勧められてたのを助けただけよ。」
さすがにこの席で、外泊した時はスンリと一晩過ごしていたとは言えなかった。
「そ・・そうか。てっきり酔いつぶれてソラが介抱したのかと思ったよ。」
「でもよく似ているわね、大学時代のスンジョに・・・・・・」
ヘラはスンジョと過ごした理工学部時代を懐かしく思い出していた。
緊張しながらもそれを顔に出さないスンリを見て、ソラはますます好きになったが、母とスンリの父との過去を思うと複雑だった。
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