スンリのイタズラなKiss 48
ギョンスのコメカミがピクピクと脈打っていた。
ヘラとソラは二人同時に、ギョンスの傍にあったラケットに視線を送った。
そのラケットにギョンスの手が伸びかけた時、ヘラとソラは同時にその動きを阻止すべく動いた。
「離せ!ヘラ!ソラ!この・・・・・・この無表情冷徹男・・・・・オ・ハニだけに飽き足らずオレのヘラとソラにまで・・・・・・・」
「「プッ!」」
ギョンスの発した言葉にヘラとソラは吹き出した。
言われたスンリもソラの父が、自分と誰かを間違えている事に気が付いた。
妻と娘に抑え込まれて、息を切らせていた。
「あの・・・・そんなにオレは親父に似ていますか?」
「親父?・・・・・・・ぁぁ・・・・・・・・」
テニスラケットを握らないと、人当たりのいい娘を溺愛する普通の父親。
「若い頃の親父の写真は家になくて・・・・・あっても、親父は見せてくれなくて。」
「そうね・・・確かに父親似だけど・・・ごめんなさいね、ラケットを握ると人が変わってしまって。」
その後は、大人しくなったソラの父は無言になっていた。
ソラの両親恋人としてに正式に紹介されて、緊張したものの特に反対されるわけでもなく時間が過ぎた。
家族が多いスンリにとって、ソラの家は女二人が賑やかに笑ったり話したりしているが静かで気持ちが落ち着いた。
「ママ、パパ、スンリを途中まで送ってくるね。
「いいよ、オレがまたソラを送り届けなければいけなくなるだろう。一人で帰れるよ。」
「マンション入り口までね?・・・・・・」
ソラのウインクに、オレは騙されそうになった。
エレベーターの所までソラの両親に見送られた。
そのエレベーターのドアが閉まると、ソラはスンリの腕に巻きついて来た。
「どうだった?うちの両親・・・・」
「いや・・・・・うちに比べれば静かで過ごしやすいよ。弟や妹が来客の様子を見に来たり、お袋やおばあちゃんとスンハの追及に・・・・・変化の富んだ毎日に静かに過ごしたのはいつなのかと思うよ。」
「でも・・・・・パパの事・・・・・・」
「父親ってあんなもんだろ。スンハが義兄(にい)さんを連れて来た時の親父は、大学で講義をしている時の親父とは別人くらいに顔の表情が変わったぞ。」
「へー見たかったな。」
「見えるぞ。」
「え?」
「今度うちに来いよ。オレが見せてやるから。」
話ながら歩いていると、すぐにマンション入り口に来てしまう。
お互いに気持ちが通じ合ったからなのか、ここで別れる事に心残りになるのか、ソラはスンリの服を引っ張った。
「ん?」
「なんでもない・・・・・けど・・・・・」
廻りには誰もいなかった。
スンリはそっとソラの口にキスをした。
「家に帰ったら、メールするから。」
自動で開いたドアから外に出て、スンリは片手を挙げた。
それに応えるようにソラは手を振るとドアは静かに閉じた。
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