スンリのイタズラなKiss 49
長い上り坂を見上げれば、ペク家の煉瓦の塀が見えて来た。
ソラの両親に挨拶をして、何事もなく過ぎたのに気が重かった。
ソラの両親と自分ん家の両親。
「仲がいいのは間違いないのだけどな。」
玄関を開けるといつも決まって一番下の双子たちが自分に纏わり付いてくる。
纏わり付いてくると思っていたら、今日は双子たちどころか、弟たちも出て来ない。
ああ・・・そうか。
今日は日曜日だから親父が双子を連れてどこかに行ったんだ。
____ガッシャーン
「イタッ!」
食器の割れる音に、ハニの叫び声。
急いでキッチンに行くと、ハニが指に怪我をしたのかエプロン端で止血していた。
「怪我・・・したの?」
その声に驚いて尻餅をつくハニを、スンリは手を差し出した。
「びっくりした・・・・・・アッパかと思った。」
引っ張り上げる母は意外と軽く、同じ年のソラの母よりも若く見える。
「オレって・・・・そんなに親父に似ているのか?」
「そっくりよ。まっ、親子だからね。」
「スンミとスンスクとスンギも一緒に行ったの?」
両親の仕事柄そろって出かけることは中々ないが、スンミ達上の3人の弟達も一緒に出掛けるのも珍しかった。
「うん・・・・オンマもね、一緒に行こうかと思ったけど・・・・ちょっと体調が昨日の夜から悪くて・・・・・」
体調が悪い?
「まさかまた・・・・・・妊娠した?」
顔を真っ赤にして手を横に振る母にスンリは意地悪い顔で笑った。
「していないわよ、孫がいるのに・・・・」
「その孫とスングとスアは同じ年だけど?」
「やぁ~ね。意地悪な所はアッパとそっくりね!もう年齢的に無理よ。ほら・・・・これ!」
よく見ると、母の足に包帯が巻かれていた。
「足・・・・・・・・」
「昨夜・・・ベッドから落ちて・・・・・」
また親父か・・・・・・・・
「誤解しないで・・・・昨日は、アッパはオンマが眠る時はまだ論文を書いていたから、トイレに行こうと思ってシーツが足に巻き付いて転んで痛めたの・・・・・・」
「何も言ってないけどな・・・・・・、親父とお袋がいつまでも若くて良かったよ。」
割れた食器を拾い集めて、ごみ箱に捨てる時にすれ違った母の身体が、随分と小さく感じた。
いつの間にかこんなにオレは背も高くなっていたんだ。
階段を上がって行くオレの背中越しに、ハニがブツブツと言っているのが聞こえた。
「な・・・・何がいつまでも若くて良かったよ。前よりは・・・・・・減ってるんだから・・・・子供のくせに変な事を覚えて・・・・・」
恥かしくもなくオレはこんな事を言える年齢になったのかと思ったが、お袋をからかうのがこんなに楽しいとは思わなかった。
ソラの両親と何が有ったのかは知らないけど、親父がお袋を選んだ理由が判る。
ソラはお袋と似ているから、元気に笑ったり話したりするのを見ていると、気難しいオレや親父には心が安らぐのかもしれない。
でも、いつかは知りたい。
親父たちとソラの両親の間にあった事が何かを。
それを知らないと、ソラとの未来も見えないかもしれない。
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