スンリのイタズラなKiss 56
ソラは骨折部の状態が良くなり、オレが見舞いに行ってから一週間後に退院をした。
車の免許を持っていなかったオレは、好きな女の子が怪我をしても送り迎えが出来ないという事を情けなく思い、ソラには内緒で車の免許を取った。
教習所の最短免許取得者の記録を抜く事は出来なかったが・・・・・・
誰がその最短記録者なのかというと、それはあのペク・スンジョ。
オレの父だ。
「スンリ君、いいのかしら送ってもらっても。」
「はい、おばさんもおじさんも出張に出かけないといけない事はソラからのメールで知りました。」
「これ、鍵よ。スペアを作ったから返さなくていいわ。」
「ヘラ、こいつに鍵を渡したら親がいない間に・・・・」
「パパ、あなたとは違いますよ。」
ソラの母親に信用されている事は嬉しいが、ソラの父親は会うたびにオレに敵意を持っているような視線を向けてくる。
「これ・・・スンリの車?」
「まさか・・親父のセカンドカーだ。」
「セカンドカー?」
「オレん家、兄弟が多いし、9人乗りのワゴンじゃないと家族全員で出かけられないからな。」
家族全員で出かけたと言っても、双子が産まれた時にスンハは結婚していたから、この車で兄弟揃って出かけた事はなかったな。
「スンリのお母さんも免許あるんでしょ?」
スンリはギョッとした。
そう・・・・スンリの母ハニの運転した車に乗るには覚悟が必要で、母を溺愛している祖母は勿論家族の誰も乗りたがらない。
「まぁ・・・・・あるけど、親父がお袋を運転させたがらなくてな。」
「へぇー、スンリのお父さんはすごく過保護なのね。」
「ハハ・・・」
ソラはオレのこの乾いた笑いの意味が判るだろうか?
そんな事を思いながらバックミラー越しにソラを見ると、入院していた数日の間に色の白くなったソラが、妙に色っぽくてスンリの心臓がドクンとした。
ソラのマンションの入り口で事前にヘラが連絡してくれていたお蔭で、駐車場管理人に住人カードを見せるとスムーズにそのまま地下駐車場に入る事が出来た。
後部座席のドアを開けてソラが松葉杖を使って降りようとした時、スンリはソラをサッと抱き上げた。
「ス・・・・スンリ・・・・・」
「恥ずかしいのか?」
「そ・・そりゃぁ・・・・・」
「オレに人前でもキスしてくるくせに?」
「それは・・・・・だってスンリの口を見るとしたくなっちゃう・・・・・・・・・」
スンリが抱き上げてくれたと思ったら、今度はいきなりのキスにソラはいつもよりしおらしく俯いた。
「そうやって静かにしていてくれれば、部屋まで落とさずに運べるから静かにしていてくれよ。」
「ソラの部屋はどこだ?」
「部屋に入るの?」
「いけないのか?」
「いい・・・・いい・・・入らなくて・・・・まだ心の準備が・・・・・」
「はぁ?何を勘違いしているんだ。骨折している彼女に何もしないよ。してもキスまでだ。」
ソラをそっとベッドに置いて、スンリは傍に有った椅子を持って来た。
「寝てろよ、見ていてやるから。」
スンリに寝顔を見られると思うと、恥ずかしい気持ちもあるが、家に帰って来た安心感からか、ソラは横になってから割と早く眠った。
「ああ・・・・この状況で、寝顔を見ているのは地獄だな・・・・オレは親父みたいに感情を抑える事が出来ないから・・・・・・親父に似たかったな・・・・」
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